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DIY、山に登る

闘仙 その10

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 帝国が攻めてくる。
 それは『仙郷』に住む者たちにとって、いつかは訪れる事態であった。

 近くに帝都を持つ九龍帝国は、武力による侵略によって領土を拡大させてきた。
 何度も何度も力で近くの街々を狙っては、すべて捻じ伏せて圧倒していく。

 だが、そんな帝国にも対抗し得る者たちがいた。
 それが一国家として無数の兵を付き従えていたのならば、まだ帝国としても納得がいくのだろう。

 しかしそれを成したのは、わずか数千の民しかいない街の者たち。
 ──仙人と呼ばれる存在であった。

 故に帝国は仙人の秘密を暴こうと、さまざまな手を駆使して情報を集めようとする。
 そのすべてが失敗に終わるのだが、すべての皇帝が同じ方法を選んだ。

「侵略せよ。幾百の時を超え、幾千の兵が犠牲となった。我らの覇道に終わりはなく、これが始まりを告げる戦となる。彼の者どもをすべて滅ぼし、仙人の力を奪うか根絶やす。我らの力、見せつけてやれ!」

『ウォオオオオ!』

 今代の皇帝は初代皇帝以上に──力による侵略を、武による戦いを、支配による成果を好む真の狂人であった。

 カリスマも凄まじく、兵一人一人に死兵となることを喜ばしく感じさせるほど、現皇帝は才溢れる者である。

 これまではかつての皇帝たちの不文律──そして神の宣誓に大人しく従い攻め滅ぼす選択はせず、諜報員を送り出す程度に侵略を抑えていた。

 だが、神の宣誓は期限が切れ、かつての皇帝が伝えた失敗談など気にもしない今の皇帝は動く。

(帝国が仙人などという、手品師どもに負けるはずがない。これまでの馬鹿どもは手を抜き過ぎた結果、敗北しただけ。『超越者』と呼ばれる者だろうが、今の九龍帝国に敗北はありえない!)

 皇帝は情報を集めた、そしてその存在を知ることになった。

『超越者』、生き物としての枠をはみ出した化け物どもの総称。

 西の国の騎士王や地下に潜む冥王、近くでは目的の場所に住む闘仙などが居る。
 恐るべき個の力、軍を倒し国をも滅ぼす圧倒的な力の保持者。

(奴らも所詮は人の身。アレを手に入れた我らの前に、足掻くことすらできずにひれ伏すことになるのだ)

 そう哂い、窪みに位置する街を見下ろす。
 魔道具越しに見る街は、帝国の出現を迎え撃とうと戦支度を整えている。

「ふむ、地下にあるダンジョンとやらは……囮だけで充分であろう。貴族共に任せておこう。我が望むは唯一つ……死、のみである」

 皇帝の願いはたしかに叶う。
 膨大な数の死が、これから始まる戦いの中で生まれるであろう。

「……むっ、なんだいったい」

 画面越しに見る街と兵たちとの間に、眩い光が放たれる。
 光が治まったとき、そこにいたのは──外套に身を包む髑髏の仮面を嵌めた男だった。

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