上 下
218 / 2,791
DIY、山に登る

闘仙 その08

しおりを挟む


「一言で言えば、後続思いの老人だ。自らを人柱としてあの場所を造り、次代の【仙王】たちが迷わぬよう見守っている」

「アタシのあの生活にケチを付けてなかったけど、それなら問題なかったんでしょ? なら早くアタシを家に――」

「時として、【仙王】の選別を間違える。今までの【仙王】すべてが善良であったわけではない。そうした悪意を持った【仙王】を初代である【仙王】が捌いてきた」

「あ、あれ? 無視するの?」

『仙郷』の長い歴史の中でも、そうした者は何度か現れ──歴史の表舞台に現れる前に、ほとんどの者が処理されていった。
 逃れられたものは、【仙王】の力を捨ててでも逃げ延びようとした者のみ。

 力に固執した者は──誰一人として、生き残ることはなかった。

「というか、【仙王】って単語ばっかり。それじゃあ、それ以外の人には優しいの?」

「…………そう、だな。基本、初代【仙王】は善良であった。だが、それと同じくらいこの『闘仙』の名が似合っていた」

 かつて見た【仙王】の姿を思い返し、そう思う『闘仙』。
 ツクルに進めた修行場とは、初代【仙王】が今も残るダンジョンの奥深く。

 そして今、きっと二人は相見えているだろう……直感で気づいていた。

「早く戻っていこい、『生者』。そして、地下で鍛えたその実力を魅せてみろ」

「…………ローさん。たぶん、ローさんの望む展開にはならないと思う」

 なんとなくなのだが、【仙王】は『闘仙』の願いが叶わないことを察する。
 それが【仙王】が故の予告なのか、それともまた別の理由なのか。

 どちらにせよ、どちらの意見も正しかったといえよう。

 たしかに二人は相見え、戦い力を鍛えることとなった。
 たしかに闘いはしなかった、それでも力をぶつけ合うことはあったのだ。

 ──真実を知らぬ二人は、話をもう少し膨らませようとしていた。


 だが、それは一人の衛兵の報告によって中断される。

「【仙王】様!」

「……ん? なーに、リー」

「帝国です! 帝国が精鋭を連れて攻めてきた模様です!」

「なんだとっ!?」

  ◆   □   ◆   □   ◆

『…………』

「あ、もう満タンだ」

 仙丹を封じるエネルギーパックが、気づけば限界量まで溜まっていた。

 まだ【仙王】や『闘仙』さんほどの仙丹を溜められないんだよな。
 今回の実験の副次結果として、大量の仙丹が手に入ったからそっちも実験だ。

 仙丹を吸われ続け、力尽きたように倒れ伏した初代【仙王】に話しかける。

「それじゃあ、もう終わりで良いですか?」

『……構わん。儂はしばらくここで休む。宝物庫はそっちにある』

「あっ、すいません。助かりました」

『ただし、コアに触れるでないぞ。あれは、人が触れて良い物ではない』

「分かりました、触りません」

 そう、俺は触らないことを誓おう。
 並べられた宝の山を見てそう思った。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった

ミズノみすぎ
ファンタジー
「黒騎士ゼクード・フォルス。君を竜狩り精鋭部隊【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命する」  15歳の春。  念願のS級騎士になった俺は、いきなり国王様からそんな命令を下された。 「隊長とか面倒くさいんですけど」  S級騎士はモテるって聞いたからなったけど、隊長とかそんな重いポジションは…… 「部下は美女揃いだぞ?」 「やらせていただきます!」  こうして俺は仕方なく隊長となった。  渡された部隊名簿を見ると隊員は俺を含めた女騎士3人の計4人構成となっていた。  女騎士二人は17歳。  もう一人の女騎士は19歳(俺の担任の先生)。   「あの……みんな年上なんですが」 「だが美人揃いだぞ?」 「がんばります!」  とは言ったものの。  俺のような若輩者の部下にされて、彼女たちに文句はないのだろうか?  と思っていた翌日の朝。  実家の玄関を部下となる女騎士が叩いてきた! ★のマークがついた話数にはイラストや4コマなどが後書きに記載されています。 ※2023年11月25日に書籍が発売!  イラストレーターはiltusa先生です! ※コミカライズも進行中!

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。 17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。 高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。 本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。 折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。 それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。 これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。 有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

処理中です...