虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
2,753 / 2,853
DIY、とにかく戦い続ける

特殊耐久サバイバル部門後篇 その31

しおりを挟む


 樹海領域

 前回は魔獣をほぼ単独で討伐したが、今回は裏切り者たちときちんと話し合って討伐することに。

 無論、作戦立てをできるほど頭はよろしくないので『SEBAS』にお任せ。
 ……オンゲーの頃なんかは、だいたいジンリが考えていたっけ。

「何とも霧が濃い……観測機器はどれも使い物になりませんし、自分の眼だけを頼りに進まなければならないのですか」

 すでに作戦は説明済み。
 さすがは『SEBAS』案のもの、最終的には誰も不満を抱くことなく、計画を実行することを決めた。

 現在、俺と近接職の面々が先んじて樹海の中を彷徨っている。
 集団では挑まず、あえて一人ずつ……事前情報に、樹海の霧の幻覚性を聞いていた。

《大前提として、樹海内部では幻覚への耐性が著しく低下します。無効化できる者でも、周囲を正しく把握できないほどには》

「……正しく歩けるでしょうか。死の予感が周囲から感じ取れるんですよね」

《魔物たちもまた、この内部では同様に霧の影響を受けます。敵味方無差別であるからこそ、これだけの効果を発揮するのです》

「誰も信用していない、という魔獣の在り方が反映されているのかもしれませんね」

 自分以外の反応を掴んだら、即座に攻撃というのがここでの定番。
 しかしながら、俺たちは自分以外の連中を見つけた時にあることをすると決めていた。

『…………』

「どうやら、仲間のようですね。では、そのまま行きましょう」

 あちらからどう見えているかは分からないが、俺から見えたのは四足歩行の魔物。
 だが魔物はすぐに襲い掛かっては来ず、しばらくただ立っているだけ。

 それを確認して数十秒後に、共に別の方向へ向かって歩き出す。
 ──そう、数十秒何もしないで無事なら味方、そうじゃないなら敵という暴論だ。

 状態異常の回復をドローンで行うという考えもあったのだが、回復しても即座に戻されるとのことで頓挫している。

「しかし、彼らがわざわざ四つん這いになるとは思えませんが、物理法則すら捻じ曲げて幻覚を見せるとは恐ろしいですね。エクリの眼で見ても、相手が獣に見えましたよ」

《本物に限りなく近い……いえ、この領域の内部では本物そのものを生み出す霧、なのでしょう。理であるからこそ、それに対抗する力が無ければ無効化は難しいと思われます》

「『プログレス』の、状態異常に特化したものならばあるいは……ですかね。知り得る権能持ちですと、正直難しい気がします」

 何にでも万能なあの例外を除き、逸脱した連中の権能は何かの分野に特化している。
 もしも、彼らが霧に狂わされて周囲を害すれば……何もかもすべてが滅びそうだな。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~

山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」 母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。 愛人宅に住み屋敷に帰らない父。 生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。 私には母の言葉が理解出来なかった。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

傍観している方が面白いのになぁ。

志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」 とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。 その彼らの様子はまるで…… 「茶番というか、喜劇ですね兄さま」 「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」  思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。 これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。 「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。

【完結】会いたいあなたはどこにもいない

野村にれ
恋愛
私の家族は反乱で殺され、私も処刑された。 そして私は家族の罪を暴いた貴族の娘として再び生まれた。 これは足りない罪を償えという意味なのか。 私の会いたいあなたはもうどこにもいないのに。 それでも償いのために生きている。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

処理中です...