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DIY、とにかく戦い続ける
特殊耐久サバイバル部門後篇 その31
しおりを挟む樹海領域
前回は魔獣をほぼ単独で討伐したが、今回は裏切り者たちときちんと話し合って討伐することに。
無論、作戦立てをできるほど頭はよろしくないので『SEBAS』にお任せ。
……オンゲーの頃なんかは、だいたいジンリが考えていたっけ。
「何とも霧が濃い……観測機器はどれも使い物になりませんし、自分の眼だけを頼りに進まなければならないのですか」
すでに作戦は説明済み。
さすがは『SEBAS』案のもの、最終的には誰も不満を抱くことなく、計画を実行することを決めた。
現在、俺と近接職の面々が先んじて樹海の中を彷徨っている。
集団では挑まず、あえて一人ずつ……事前情報に、樹海の霧の幻覚性を聞いていた。
《大前提として、樹海内部では幻覚への耐性が著しく低下します。無効化できる者でも、周囲を正しく把握できないほどには》
「……正しく歩けるでしょうか。死の予感が周囲から感じ取れるんですよね」
《魔物たちもまた、この内部では同様に霧の影響を受けます。敵味方無差別であるからこそ、これだけの効果を発揮するのです》
「誰も信用していない、という魔獣の在り方が反映されているのかもしれませんね」
自分以外の反応を掴んだら、即座に攻撃というのがここでの定番。
しかしながら、俺たちは自分以外の連中を見つけた時にあることをすると決めていた。
『…………』
「どうやら、仲間のようですね。では、そのまま行きましょう」
あちらからどう見えているかは分からないが、俺から見えたのは四足歩行の魔物。
だが魔物はすぐに襲い掛かっては来ず、しばらくただ立っているだけ。
それを確認して数十秒後に、共に別の方向へ向かって歩き出す。
──そう、数十秒何もしないで無事なら味方、そうじゃないなら敵という暴論だ。
状態異常の回復をドローンで行うという考えもあったのだが、回復しても即座に戻されるとのことで頓挫している。
「しかし、彼らがわざわざ四つん這いになるとは思えませんが、物理法則すら捻じ曲げて幻覚を見せるとは恐ろしいですね。エクリの眼で見ても、相手が獣に見えましたよ」
《本物に限りなく近い……いえ、この領域の内部では本物そのものを生み出す霧、なのでしょう。理であるからこそ、それに対抗する力が無ければ無効化は難しいと思われます》
「『プログレス』の、状態異常に特化したものならばあるいは……ですかね。知り得る権能持ちですと、正直難しい気がします」
何にでも万能なあの例外を除き、逸脱した連中の権能は何かの分野に特化している。
もしも、彼らが霧に狂わされて周囲を害すれば……何もかもすべてが滅びそうだな。
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