虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
2,737 / 2,834
DIY、とにかく戦い続ける

特殊耐久サバイバル部門後篇 その15

しおりを挟む


 侵攻してくる三体の魔獣を相手に、こちらは参加者(裏切り者)だけで対応しなければならない。

 うち二体はどうにか被害を抑え込めているのだが、カエル型の魔獣による暴虐を同にも止められないでいた。

「──『試作型増蓄魔銃・壱式』」

 そこで俺が使うのは、このイベント中に一から作り上げた一丁の拳銃。
 普段はあまり使えない、希少な魔物や魔獣の素材をふんだんに使った逸品だ。

「『形状変更:狙撃』」

 形状記憶合金を錬金術で作り上げ、いくつかの形を瞬時に取れるよう設計してある。
 これ自体は、ロマンとしていつも俺の武器に搭載しているが……本番はここから。

「“万物闇換”──『装填』」

 万物を闇に変換する、エクリ固有の能力に重ねて使うのは銃に組み込んだ機構。
 闇属性の魔力が中に注がれていき、銃に刻まれた線を臙脂色に光らせていく。

 純度百パーセントの闇の魔力、それが一定量まで溜まった時、次の段階へ移行する。
 注がれていた魔力が自動的に遮断され、銃から放たれる光が真紅へと染まっていいく。

「……『回避』」

 ここで擬似スキルの発動を宣言。
 同時に、どこからともなく長い舌が俺を穿つべく物凄い速度で飛んでくる。

 認識を超えた速度、だがそれ以上に優れた体が自動的にその攻撃を躱した。
 放ったのは件の魔獣、どうやら危機察知能力的に俺の攻撃を危ういと判断したらしい。

「『加速門』展開、弾丸形式『螺旋』、特殊機構接続──『プログレス:バレットパレット』、着色は『黄』」

 だがこちらの準備は着々と進む。
 銃内部に空間の歪みが生じ、同時に形成される弾丸の形状が通常の物から捻じれた物へと変更される。

 加えて、『プログレス』の擬似権能とリンクすることで弾丸が黄色に染まった。
 これで準備は万端、本当は体を固定しておきたかったのだが……さすがに無理だな。

 この銃の最大の特徴は、突っ込んだ魔力を勝手に蓄積して増幅してくれるところ。
 限度に達すれば圧縮して精製、純度の高い魔力を更に臨界ギリギリまで強化していく。

 カエルはとことん俺を追いかけ、裏切り者たちを無視してそれを邪魔してくる。
 正直、途中で邪魔されると制御不可能な魔力が辺り一帯を破壊するのでかなり危うい。

 それでも、準備を整えてここぞというその時を待つ。
 やがてそれは唐突に、カエルが金縛りにでもあったかのように動きを止めたのだ。

「俺たちを無視しやがって……おい、トドメはくれてやるよ!」

「ええ、お礼は後の宴で盛大に振る舞いますね──『射出』」

 空間の捻じれにより、銃口から飛び出すはずの魔力が中をループしている。
 その都度、加速門から魔力を集め、更に速度も高めていく。

 やがてそれすらも限界に達したとき、門の繰り返しが終わり銃口の外へ。
 光を超える神速、不可視であろうそれは小さな魔力の礫。

 それがカエルを貫く。
 貫通した直後は何も起きなかった、そしてその後しばらく何も起きない。

 だが、命の気配を掴むことができる者だけが気づくことができる。
 ──たった一発の弾丸、カエル型の魔獣はソレに殺され息を引き取ったのだった。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷

くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。 怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。 最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。 その要因は手に持つ箱。 ゲーム、Anotherfantasia 体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。 「このゲームがなんぼのもんよ!!!」 怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。 「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」 ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。 それは、翠の想像を上回った。 「これが………ゲーム………?」 現実離れした世界観。 でも、確かに感じるのは現実だった。 初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。 楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。 【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】 翠は、柔らかく笑うのだった。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

処理中です...