虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
2,721 / 2,827
DIY、とにかく戦い続ける

特殊耐久サバイバル部門前篇 その49

しおりを挟む


 特殊耐久サバイバル部門 ???

 魔獣たちの遣いと合流する。
 売り渡したわけじゃないが、家族が居る場所を伝え代わりに俺がそこに直接干渉しないことを約束させた。

「──ここは?」

「私どもの領域ですよ。そして、魔獣の皆様が離れた領域へ勢力を派遣するための通路でもあります」

「……なるほど、ここがそうなのですか」

 ドローンで『SEBAS』が集まてくれたどの区画の地形とも当て嵌まらない、遠近感覚すら狂いそうな空間。

 なぜならそこには、それぞれの領域が一つずつの世界のように浮いている。
 球体のそれらはおそらく支配したフィールドの数に応じて、大きさを変えるのだろう。

 そう言えるのは、数個の球体が目に見えて他のモノに比べて大きいから。
 砂の世界と氷の世界、それに火山の世界が一回り大きいサイズだ。

「競い合いをされているので?」

「お互いの状況を見せ合うのもまた、ルールの一つのようなものですので。そして、ご希望があればその領域と隣接した中立地帯へ向けて、私どもが魔物を送れるようにいづれなるのです」

「……中立地帯限定ですか?」

「はい、そうなります。なお、魔獣の皆様方が乗り込むことはすぐにはできません。魔物たちがある程度、手順を踏む下準備を成功しなければなりません」

 他の支配領域に直接手を出せない、そして中立地帯への干渉もまた一定のルールを設けて侵攻を行っている。

 単純な奪い合いというわけではなく、ある程度戦術を組むことも求められていた。
 脳筋プレイですべて解決するには、かなりの実力が必要となるだろう。

「これを行うことで、貴方がたにはいったいどのようなメリットがあるのでしょうか?」

「そうですね……単純に強くなれます。本来出会うことの無かった多くの魔獣との接触、そして力の奪い合い。勝者となれば、相応の力を得ることができるでしょう」

「負けた場合のデメリットは?」

「終わりです。命の保証があるそちら側と違い、命懸けだからこそ働くルールがいくつかございますので」

 負ければ死ぬ、それは本来弱肉強食の理に生きる魔獣にとっては当然のこと。
 だからこそ、彼らは現状を打破するべく行動に移ったわけだ。

「さて、実は今回特別に貴方様を先んじてこちらに招いたのは他でもありません。一つのご依頼をしたかったからです」

「……そうですね。誰も他の参加者が居ないことについての説明が欲しかったんです」

「ええ、ここには魔獣の皆様を示す球体がございます。そこからある程度、素材を得ることもできるでしょう──が、それ以外にはこの空間に何も無いのです」

「……準備は?」

「ええ、お願いしたいのです」

「…………」

 ピコンッ、と通知が入り[クエスト]が展開された。
 普段、生産ギルドの依頼をまったく受けられない俺からすると珍しいモノだ。

 だが先の会話から察せられる内容、あからさまに面倒臭そう。
 ──それでも俺は依頼を確認後、すぐさま作業に取り掛かるのだった。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷

くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。 怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。 最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。 その要因は手に持つ箱。 ゲーム、Anotherfantasia 体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。 「このゲームがなんぼのもんよ!!!」 怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。 「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」 ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。 それは、翠の想像を上回った。 「これが………ゲーム………?」 現実離れした世界観。 でも、確かに感じるのは現実だった。 初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。 楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。 【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】 翠は、柔らかく笑うのだった。

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

なんでもアリな異世界は、なんだか楽しそうです!!

日向ぼっこ
ファンタジー
「異世界転生してみないか?」 見覚えのない部屋の中で神を自称する男は話を続ける。 神の暇つぶしに付き合う代わりに異世界チートしてみないか? ってことだよと。 特に悩むこともなくその話を受け入れたクロムは広大な草原の中で目を覚ます。 突如襲い掛かる魔物の群れに対してとっさに突き出した両手より光が輝き、この世界で生き抜くための力を自覚することとなる。 なんでもアリの世界として創造されたこの世界にて、様々な体験をすることとなる。 ・魔物に襲われている女の子との出会い ・勇者との出会い ・魔王との出会い ・他の転生者との出会い ・波長の合う仲間との出会い etc....... チート能力を駆使して異世界生活を楽しむ中、この世界の<異常性>に直面することとなる。 その時クロムは何を想い、何をするのか…… このお話は全てのキッカケとなった創造神の一言から始まることになる……

World of Fantasia

神代 コウ
ファンタジー
ゲームでファンタジーをするのではなく、人がファンタジーできる世界、それがWorld of Fantasia(ワールド オブ ファンタジア)通称WoF。 世界のアクティブユーザー数が3000万人を超える人気VR MMO RPG。 圧倒的な自由度と多彩なクラス、そして成長し続けるNPC達のAI技術。 そこにはまるでファンタジーの世界で、新たな人生を送っているかのような感覚にすらなる魅力がある。 現実の世界で迷い・躓き・無駄な時間を過ごしてきた慎(しん)はゲーム中、あるバグに遭遇し気絶してしまう。彼はゲームの世界と現実の世界を行き来できるようになっていた。 2つの世界を行き来できる人物を狙う者。現実の世界に現れるゲームのモンスター。 世界的人気作WoFに起きている問題を探る、ユーザー達のファンタジア、ここに開演。

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

処理中です...