虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
2,716 / 2,831
DIY、とにかく戦い続ける

特殊耐久サバイバル部門前篇 その44

しおりを挟む


 魔獣たちを相手に、砦を突破されることなく耐え切っている参加者たち。
 俺も微精霊でヤドカリ以外の魔獣との戦いに支援をしているが……まだまだ続くな。

「──おおっ、こりゃあヤバいな」

 魔獣たちは領域の主、一つの環境を支配している強者だ。
 前回、ヤドカリはただ暴れて帰るだけだったので特にその真価は発揮されなかった。

 だが今回は違う。
 参加者たちも魔獣に対する策をしっかりと用意し、魔獣を相手にある程度は戦うことができていた……だからこそ、それが起きる。

「ゲームのボスとかによくあるよな、自分に有利な空間を生み出すアレ。うん、それが現実に起きるならこんな感じなんだろう」

 ドローンが観測したモノ、それは魔獣を中心として空間が大きく塗り替えられていく壮絶な光景だった。

 北からはおどろおどろしい暗闇、剥き出しの死が次々と地面から這い上がってくる。
 東からはどこまでも生い茂る植物、尋常ならざる生命力の猛威が緑の海を生み出す。

「丘陵の北側はあんな感じなのか……で、東はやっぱりあんな風に広がると」

 支配領域に合わせて魔獣が生まれるのではない、魔獣が居るからこそ支配領域はそれに相応しい姿となるのだ。

 現に、先んじて侵攻を済ませた砂漠と氷原に住まう魔獣によって、ドローンが元の姿を知る前に領域の上書きが済まされている。

《旦那様、雫の影響で感知を回避できていますがご注意を。気づかれれば、間違いなく最優先で迫ってくることでしょう》

「了解。解析してみたけど、やっぱり星樹の枝は凄かったもんな」

 植物領域の最重要アイテムを盗んだ俺を、魔獣は絶対に許さない。
 ……そう考えると、阻止するためにもここでの支援は本格的にやった方がいいか?

「除草剤、もう少し濃くしておこうか」

《畏まりました》

 撒くだけで弱体化してくれるので、すでに散布して貢献値を稼いでいた。
 いづれは効かなくなるかもしれないが……大丈夫、何種類も用意してあるからな。

「で、領域を展開した魔獣たちはこれまでと違う動きを見せるんだよな……ヤドカリは、少し違うけど」

 個にして全、全にして個な性質を持つヤドカリは領域の展開をしない。
 むしろ、分裂し他の区画の性質を取り込むこと自体が、ある意味それに該当する。

「こうなると、どこまで抑え込めるかで決着になりそうだな……ふぅ、このままなら問題なさそうだな」

「──ええ、まったくもってその通り」

 俺は『SEBAS』に声を掛けていた。
 だというのに、その声は脳裏では無く耳を通じてきちんと届く。

 影の中に潜んでいた俺に気づき、場所を特定したうえで声を掛けてきたのだ。
 ……さすがに三日目ともなると、トラブルの一つぐらいあるよな。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

てめぇの所為だよ

章槻雅希
ファンタジー
王太子ウルリコは政略によって結ばれた婚約が気に食わなかった。それを隠そうともせずに臨んだ婚約者エウフェミアとの茶会で彼は自分ばかりが貧乏くじを引いたと彼女を責める。しかし、見事に返り討ちに遭うのだった。 『小説家になろう』様・『アルファポリス』様の重複投稿、自サイトにも掲載。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷

くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。 怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。 最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。 その要因は手に持つ箱。 ゲーム、Anotherfantasia 体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。 「このゲームがなんぼのもんよ!!!」 怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。 「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」 ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。 それは、翠の想像を上回った。 「これが………ゲーム………?」 現実離れした世界観。 でも、確かに感じるのは現実だった。 初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。 楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。 【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】 翠は、柔らかく笑うのだった。

私はいけにえ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」  ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。  私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。 ****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。

処理中です...