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DIY、とにかく戦い続ける
特殊耐久サバイバル部門前篇 その24
しおりを挟む谷の中立地帯を散策した結果、大変価値のある霧を発見した。
ただし、資源は有限……いづれは奪い合いが起きるだろうな。
「──まあ、その前に貰えるだけ貰っておくけどさ。“抽出”、“精製”」
かつて、『インスタントシール』という錬金術を簡易的に使えるアイテムを作ったことがある。
錬金術で出来るアイテムへの干渉を、術式としてシールに刻んだものだ。
エクリにもその術式は刻まれており、スキルを持たずとも錬金術の真似事ができる。
大気中の霧を対象として発動、目的の自然魔力を内包した水分を“抽出”。
集めた水分から更に高純度な所を“精製”し、一つに纏めあげる。
先に『SEBAS』が告げた通り、霧を搾り取ったことでその部分だけが空白となる。
霧は不自然にその場所だけを避け、上から下を見下ろせる状態となった。
──なお、俺はそこに居ない。
「“万闇統一”が、こんなこともできる優秀な能力で良かったよ」
能力発動時の始点、その拡大解釈。
要は自分を、ではなく闇の一点を介して能力の行使が可能となるのだ。
能力行使に見合った形状で無ければできないという制限はあるが、今回は関係無い。
自分のいる場所から懸け離れた場所で、先の錬金術を闇経由で使っただけのこと。
闇を介して運ばれてきた魔力水を、手持ちの試験管に注いでいく。
鉱石加工のついでにガラス加工も、このような時のためにやっておいたのだ。
「“鑑定”……『高純度魔力水(特殊)』、その特殊の詳細を教えてほしいんだがな」
まあ、きちんと“精製”も施しておいたお陰で高純度とシステムが判断してくれた。
あとはこれを:DIY:に登録して……うわっ、必要消費魔力量が尋常じゃない!
「やっぱり希少品か……奪い合い必須だな。そして、俺の空けた空白地帯で一騒動始まってしまったよ」
いちおう参加者たちが全然居ない場所を見つけて、そこで試してみたのだが。
さすがにここまで露骨に見えるとは思っても居なかったので、仕方が無いよ。
参加者たちがどういったことなのかと、上から下から調査しに来ている。
下の連中は気づいていると思ったが……ああ、人を出さないと逆に怪しまれるのか。
そんなこんなで、霧の無い空白地帯で揉め事が始まってしまった。
ごめんよ、上にも下にも厄介になってない壁歩き勢の仕業なんです。
「『SEBAS』、アレってどれくらいで回復すると思う? さすがに一日とかそれ以上では無いと思うんだが……」
《下の者たちの動きが割れていない以上、それなりに回復量は多いのでは? いちおう、ドローンを一台残しておきましょう》
といったわけで、俺たちはドローンを一台残して次の領域へ向かうことに。
この水の使い道も、移動中にゆっくりと考えておこうか。
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