上 下
213 / 2,733
DIY、山に登る

闘仙 その03

しおりを挟む


 再び潜ったダンジョンは相も変わらず強敵が蔓延る魔の巣窟であった。
 当然と言えば当然なのだが、それはしょうがないことだろう。

「さて、今回はどうやって進もうか」

 前回は穴を掘って外へ脱出、その後斜面に沿って頂上に到達した。

 だが、今回の目的地は地下。
 前回と同様の方法は難しいだろう。

「あっ、そもそも普通に攻略すればいいか」

 どうしてそれに気づけなかったのだろう。
 まあ、その方法だと死に続けるからこその選択だったんだがな。

 ダンジョン攻略に魔物は付き物。
 それを乗り越えてこその冒険ではないか。

「魔道具も装置も使えるし、たまにはそれっぽいことをしてみますか」

 スタンガンを取りだし、モルメスもすぐに使えるようにしておく。
 結界生成用の鞘には魔道具としての機能が付いている剣を収めて光学迷彩も起動する。

「──よし、それじゃあ攻略だ」



 明確な階数は分からない。
 すでにスタート地点は踏み越えており、今は下へ下へと潜っている最中だ。

 魔物に襲われることは無かったが、それはあくまで行きの道を通っていたからである。

「そして、避けられない状況に陥ったと」

 死亡レーダーで極力戦闘を避けていた、というのも理由の一つだ。
 だが、残念なことに進む方向に魔物の存在があった。

「仕方ない、見つかったなら戦うしかない」

 光学迷彩を信じてはいるがただでさえ仙丹というエネルギーがあるこの地域。
 光学迷彩を破る方法をもしかしたら、俺の知る方法以外で使うかもしれない。

 スタンガンのモードが『気絶』に設定されていることを確認して、ゆっくりと魔物が居る場所を覗いてみる。

「あれは……デミゴブリンか」

 ゴブリンに似た、悪しき魔物──それがデミゴブリンである。
 本当のゴブリンは妖精族の一種で、そのことはエルフの里で働いている間に知った。

 目に見えるゴブリンとの違いは、醜悪な顔と澱んだ瞳だそうだ。
 一番の違いは、体の中に魔核があるかどうからしい。

 緑色の皮膚をした小さな体の種族。
 俺は両方見た上、ゴブリンとしっかり話し合ったことがあるから問題ないが……プレイヤーの中には、ゴブリンを魔物だと判断して襲いかかる奴がいるかもな。

「気づかれて……いないみたいだな」

 その先に居るのは3体のデミゴブリン。
 何やら話し合いながら移動中だが、言語は理解できない。

 ただ錆びたボロボロの武器を手で弄んでいるので、友好的な会話は無理だと分かる。

「射撃してみますか」

 前にスタンガンを射撃モードで使った際、対象が強烈な電撃を浴びて消滅した。
 どうやらスタンガンから電気が離れることで、制御ができなくなったらしい。

 なのでそれをできるように、改良したこのスタンガンなら──

『『『グギャギャギャギャッ!?』』』ビリッ

 弱い電流を浴び、デミゴブリンは倒れる。
 近寄って脈を計ると、確かに生きていることが分かった。
 ──よし、トラウマになってない。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」

サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

公爵令嬢はアホ係から卒業する

依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」  婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。  そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。   いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?  何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。  エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。  彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。    *『小説家になろう』でも公開しています。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

処理中です...