虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
213 / 2,820
DIY、山に登る

闘仙 その03

しおりを挟む


 再び潜ったダンジョンは相も変わらず強敵が蔓延る魔の巣窟であった。
 当然と言えば当然なのだが、それはしょうがないことだろう。

「さて、今回はどうやって進もうか」

 前回は穴を掘って外へ脱出、その後斜面に沿って頂上に到達した。

 だが、今回の目的地は地下。
 前回と同様の方法は難しいだろう。

「あっ、そもそも普通に攻略すればいいか」

 どうしてそれに気づけなかったのだろう。
 まあ、その方法だと死に続けるからこその選択だったんだがな。

 ダンジョン攻略に魔物は付き物。
 それを乗り越えてこその冒険ではないか。

「魔道具も装置も使えるし、たまにはそれっぽいことをしてみますか」

 スタンガンを取りだし、モルメスもすぐに使えるようにしておく。
 結界生成用の鞘には魔道具としての機能が付いている剣を収めて光学迷彩も起動する。

「──よし、それじゃあ攻略だ」



 明確な階数は分からない。
 すでにスタート地点は踏み越えており、今は下へ下へと潜っている最中だ。

 魔物に襲われることは無かったが、それはあくまで行きの道を通っていたからである。

「そして、避けられない状況に陥ったと」

 死亡レーダーで極力戦闘を避けていた、というのも理由の一つだ。
 だが、残念なことに進む方向に魔物の存在があった。

「仕方ない、見つかったなら戦うしかない」

 光学迷彩を信じてはいるがただでさえ仙丹というエネルギーがあるこの地域。
 光学迷彩を破る方法をもしかしたら、俺の知る方法以外で使うかもしれない。

 スタンガンのモードが『気絶』に設定されていることを確認して、ゆっくりと魔物が居る場所を覗いてみる。

「あれは……デミゴブリンか」

 ゴブリンに似た、悪しき魔物──それがデミゴブリンである。
 本当のゴブリンは妖精族の一種で、そのことはエルフの里で働いている間に知った。

 目に見えるゴブリンとの違いは、醜悪な顔と澱んだ瞳だそうだ。
 一番の違いは、体の中に魔核があるかどうからしい。

 緑色の皮膚をした小さな体の種族。
 俺は両方見た上、ゴブリンとしっかり話し合ったことがあるから問題ないが……プレイヤーの中には、ゴブリンを魔物だと判断して襲いかかる奴がいるかもな。

「気づかれて……いないみたいだな」

 その先に居るのは3体のデミゴブリン。
 何やら話し合いながら移動中だが、言語は理解できない。

 ただ錆びたボロボロの武器を手で弄んでいるので、友好的な会話は無理だと分かる。

「射撃してみますか」

 前にスタンガンを射撃モードで使った際、対象が強烈な電撃を浴びて消滅した。
 どうやらスタンガンから電気が離れることで、制御ができなくなったらしい。

 なのでそれをできるように、改良したこのスタンガンなら──

『『『グギャギャギャギャッ!?』』』ビリッ

 弱い電流を浴び、デミゴブリンは倒れる。
 近寄って脈を計ると、確かに生きていることが分かった。
 ──よし、トラウマになってない。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

何でも奪っていく妹が森まで押しかけてきた ~今更私の言ったことを理解しても、もう遅い~

秋鷺 照
ファンタジー
「お姉さま、それちょうだい!」  妹のアリアにそう言われ奪われ続け、果ては婚約者まで奪われたロメリアは、首でも吊ろうかと思いながら森の奥深くへ歩いて行く。そうしてたどり着いてしまった森の深層には屋敷があった。  ロメリアは屋敷の主に見初められ、捕らえられてしまう。  どうやって逃げ出そう……悩んでいるところに、妹が押しかけてきた。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する

こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」 そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。 だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。 「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」 窮地に追い込まれたフォーレスト。 だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。 こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。 これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

Free Emblem On-line

ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。 VRMMO『Free Emblem Online』 通称『F.E.O』 自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。 ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。 そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。 なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

婚約破棄されたけど、逆に断罪してやった。

ゆーぞー
ファンタジー
気がついたら乙女ゲームやラノベによくある断罪シーンだった。これはきっと夢ね。それなら好きにやらせてもらおう。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです

かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。 強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。 これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

処理中です...