211 / 2,820
DIY、山に登る
闘仙 その01
しおりを挟むさて、舞台は再び【仙王】の住まう街に戻ることになる。
一度はあっさりと登ってしまった山に、隠された秘宝があると『闘仙』さんに聞いた。
ここが地球で秘宝が埋蔵金に置き換わろうと……まあ、普通無視するよな。
だがここは、ゲームの世界で夢とロマンが溢れるファンタジーの世界だ。
人の夢と書いて儚いと読む悲しい世界とは違い、努力が実る世界である。
──ダンジョンに秘宝がある!
その言葉に心を踊らされない者は、そう多くないだろう。
特にゲーム内でそう強くない者、強くとも大成できない者は深く思うであろう。
「──と、いうわけで独りでアタックしてみようと思う」
「急だな、『生者』」
「『闘仙』さんが言ったのではないですか、他にも秘宝を狙い侵入してくる輩がいると。私はそうした輩に秘宝が奪われないように、この国に貢献しようと思っているだけです」
「……なら、独りでなくとも構わないのではないか? 秘宝の山分けは考えていない、ただ心配でな。これまで【仙王】や俺のような『超越者』が挑んできたが、誰一人として秘宝に辿り着いた者はいない」
「ご安心を、私は『生者』ですので」
ニコッと笑顔でそう答える。
俺が欲しいのはダンジョンに隠された秘宝でも、名誉でも無い。
──ダンジョンコアが蓄積したであろう、ダンジョンに関する情報である。
俺が攻略したダンジョン──『幼子の揺り籠』と名付けた──には、いくつかの縛りが存在していた。
自動的に出現する魔物が全て『ベビー』系の魔物なのだ。
いっさい変更はできず、何やら条件を満たさなければできないらしい。
その条件も魔物の一部を、ダンジョンコアに吸収させるなど面倒なのが多い。
だが、もう完成しているダンジョンコアを解析してその情報をコピペすることで、面倒な段階を踏まずにダンジョンを強化できる。
故に、ダンジョンコアを破壊されることも奪われることもない、一番乗りで行くことを望むのだ。
絶対に確保できるよう、もっとも速く。
「『闘仙』さん、そう言えば紹介状を書いてくれるという話……結局どうなりました?」
「ああ、用意してある。幸い、暇な時間はいくらでもあったからな」
ログアウトしている間に、この世界の時間は地球よりも早く進んでいた。
そのため、昨日ログアウトしたつもりでいてもこちらでは数日が経過している。
「これが──その書状だ。店で出せば大抵の店は『生者』に商品を売るだろう。せっかくだ、ダンジョンに潜る前の準備にでも使ってみればどうだ?」
「……そうですね。もし必要になったら、使わせてもらいます」
──これが、ダンジョンに潜る前に行ったやり取りである。
11
お気に入りに追加
647
あなたにおすすめの小説

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……


何でも奪っていく妹が森まで押しかけてきた ~今更私の言ったことを理解しても、もう遅い~
秋鷺 照
ファンタジー
「お姉さま、それちょうだい!」
妹のアリアにそう言われ奪われ続け、果ては婚約者まで奪われたロメリアは、首でも吊ろうかと思いながら森の奥深くへ歩いて行く。そうしてたどり着いてしまった森の深層には屋敷があった。
ロメリアは屋敷の主に見初められ、捕らえられてしまう。
どうやって逃げ出そう……悩んでいるところに、妹が押しかけてきた。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する
こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」
そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。
だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。
「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」
窮地に追い込まれたフォーレスト。
だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。
こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。
これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる