206 / 2,721
DIY、山に登る
仙王 その12
しおりを挟む俺と【仙王】の戦い?
いやいや、戦いなんて呼べるものは、いっさい繰り広げられておりませんから。
「なんで、なんで効かないの!?」
「いやー、あはは」
何度も何度も死に続け、それでも笑って優勢を偽る。
相手にして、もっとも嫌なのはどんな奴?
圧倒的な力を持つ奴? 悪魔的な頭脳の持ち主? 何度でも諦めない主人公?
──そうじゃない、未知な奴だ。
どうしてか分からない、なぜ、何? 一体全体どういうことか……。
それが判明しない正体不明の謎だらけ、それこそがもっとも嫌な敵だろう。
「──なお、この考えは俺の個人的な意見であり、実際の大衆が出す答えとは異なる場合があります」
「きゅ、急にどうしたの!?」
「ほらほら、落ち着いて落ち着いて。しっかりと深呼吸でもしなさいな」
そう教えると、本当に深呼吸を【仙王】は行い始める。
仙人は深呼吸一つとっても何か特別なようで、仙丹とやらが一気に彼女の中に取り込まれていくのが分かった。
「……うん、落ち着いた。それでもツクルの秘密は分からない」
「それは良かったです」
「でも、今は分からなくても構わない。封じられればアタシの勝ち」
「あっ、これはアカンヤツや」
思わずエセ関西弁が漏れ出る。
今までは、攻撃的な仙術を行ってきた。
爆発したり雷を起こしたり、身体強化で高めた肉体で直接潰したりとかな。
「まずは──縛ってみようか」
放たれる雲の縄──いや、鎖は何十何百と俺の下へ飛んでくる。
避ける間もなく俺の体を雁字搦めにしていく鎖だが、その束縛力は凄まじく……圧死して死に戻る。
「やっぱり駄目か、なら今度は──」
空間が揺らぎ、歪みが生まれる。
俺の周囲にできたそれは、俺を呑み込もうと全身を引っ張ってくる。
まあ、これは抗いようがないよな。
勢いに委ね、その中へ入っていき……死に戻りの座標を変えて戻ってくる。
「…………ちょっと、ショックかな。アタシのこれは、かなり自信あったんだけど」
「無駄ですよ、無駄無駄。私に勝ちたいのなら、全力でぶつかる必要がありますから」
「つまり、搦め手の方が効くのか」
はい、その通りです。
俺を一度取り込んだことで、空間の切れ目は消滅していた。
何もない空っぽな空間、【仙王】が繋いだ先にあるのはそんな場所だ。
入った者は絶対に死ぬ、一撃必殺とはあの技のことだろう。
だからこそ、それを封じた俺は【仙王】にとって異物として扱われるようになる。
「では、今から私はゆっくりとそちらに向かうとしましょう」
「……どういうこと?」
「簡単な話です。逃げても構いませんし、好きなだけ抗ってください。ただし私に触れられたそのとき、罰を受けてもらいます。今まで『闘仙』さんに迷惑を掛け、私が呼ばれるハメになったこと……償いましょうか」
「そ、それ、アタシじゃなくてローの方がやるべきじゃん!」
ああ、それは後でやる予定だから。
10
お気に入りに追加
643
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる