虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
2,681 / 2,812
DIY、とにかく戦い続ける

特殊耐久サバイバル部門前篇 その09

しおりを挟む


 魔獣からの追撃を、闇と海の侵食によって逃れることに成功した。
 すべてはハイスペックなエクリの力があってこそ、俺だけでは無理だったかもな。

 水の上から出て、今は魔獣の縄張りにある巨大な蓮の葉の上。
 魔獣もわざわざ追いかけてこないようなので、得た情報について話し合うことに。

「それで『SEBAS』、魔獣の観測で判明した情報を教えてほしい」

《畏まりました──魔獣は半精半獣、いわゆるケルビーと呼ばれる存在です。水に同化することで、周囲の水を自在に操ることができます》

「まあ、湖に居そうなイメージはあるな……でも、魔獣なのか」

《いわゆる堕落、魔物となった精霊が魔物を喰らうことで魔獣に進化したのでしょう。周囲を自らの優位となる湖とする、そういった能力を獲得したわけです》

 固有種への進化は特殊なもの。
 正規の進化の場合、魔物は大きく分けて二種類の中から自らの進む道を選ぶ。

 その違いは力か技か、周囲に働きかけることで自らを強める方向性──それが魔獣だ。
 先ほどまで己が身で体験した通り、領域内において魔獣は最強となれる。

 ただし、対処法は割と多い。
 俺がやったように領域内に自分用の領域を展開する、あるいは領域を一気に破壊するような強大な一撃を叩き込む……などだな。

 つまり、小手先だろうと力で勝ればどうにかできる。
 正しく弱肉強食、強ければ何もかもが許されるのが魔獣たちの理なのだ。

「そういった意味では、広がっているフィールドの規模で魔獣の強さも測れるよな。現状だとだいたい区画分けできているみたいだけど、最初に居た平原みたいにどの魔獣も支配していない場所があるわけだし」

 つまり、サバイバルの期間中に魔獣たちの戦いが変化していく。
 その渦中に巻き込まれながら、生き残るのが参加者たちの目的なわけだ。

「……上手く誘導すれば、住み心地のいい場所を作ってくれる魔獣が領域を拡大してくれるわけだな。参加者一同でそれを狙って、他の魔獣を倒すか弱らせるかして空白を作っていく……みたいなこともありえるな」

《逆に自分だけが生存可能な領域を創れる魔獣を生かし、他の参加者を貶めるような者も現れることでしょう》

「擬似的なMPKな気もするけど、特殊で耐久なサバイバルだからな。それぐらいはしても当然か」

 おそらく、規模が広がることで何かしらの恩恵は得られると思われる。
 この湖ならば蓮の葉の強化、つまり参加者たちが住めるようになるわけだな。

 これは全魔獣で該当するかもしれない。
 ──いわゆる共存関係、他の魔獣たちを退けるための戦力として、俺たちを一時的に保護する……みたいな感じだな。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!

七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ? 俺はいったい、どうなっているんだ。 真実の愛を取り戻したいだけなのに。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

処理中です...