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DIY、とにかく戦い続ける
特殊耐久サバイバル部門前篇 その09
しおりを挟む魔獣からの追撃を、闇と海の侵食によって逃れることに成功した。
すべてはハイスペックなエクリの力があってこそ、俺だけでは無理だったかもな。
水の上から出て、今は魔獣の縄張りにある巨大な蓮の葉の上。
魔獣もわざわざ追いかけてこないようなので、得た情報について話し合うことに。
「それで『SEBAS』、魔獣の観測で判明した情報を教えてほしい」
《畏まりました──魔獣は半精半獣、いわゆるケルビーと呼ばれる存在です。水に同化することで、周囲の水を自在に操ることができます》
「まあ、湖に居そうなイメージはあるな……でも、魔獣なのか」
《いわゆる堕落、魔物となった精霊が魔物を喰らうことで魔獣に進化したのでしょう。周囲を自らの優位となる湖とする、そういった能力を獲得したわけです》
固有種への進化は特殊なもの。
正規の進化の場合、魔物は大きく分けて二種類の中から自らの進む道を選ぶ。
その違いは力か技か、周囲に働きかけることで自らを強める方向性──それが魔獣だ。
先ほどまで己が身で体験した通り、領域内において魔獣は最強となれる。
ただし、対処法は割と多い。
俺がやったように領域内に自分用の領域を展開する、あるいは領域を一気に破壊するような強大な一撃を叩き込む……などだな。
つまり、小手先だろうと力で勝ればどうにかできる。
正しく弱肉強食、強ければ何もかもが許されるのが魔獣たちの理なのだ。
「そういった意味では、広がっているフィールドの規模で魔獣の強さも測れるよな。現状だとだいたい区画分けできているみたいだけど、最初に居た平原みたいにどの魔獣も支配していない場所があるわけだし」
つまり、サバイバルの期間中に魔獣たちの戦いが変化していく。
その渦中に巻き込まれながら、生き残るのが参加者たちの目的なわけだ。
「……上手く誘導すれば、住み心地のいい場所を作ってくれる魔獣が領域を拡大してくれるわけだな。参加者一同でそれを狙って、他の魔獣を倒すか弱らせるかして空白を作っていく……みたいなこともありえるな」
《逆に自分だけが生存可能な領域を創れる魔獣を生かし、他の参加者を貶めるような者も現れることでしょう》
「擬似的なMPKな気もするけど、特殊で耐久なサバイバルだからな。それぐらいはしても当然か」
おそらく、規模が広がることで何かしらの恩恵は得られると思われる。
この湖ならば蓮の葉の強化、つまり参加者たちが住めるようになるわけだな。
これは全魔獣で該当するかもしれない。
──いわゆる共存関係、他の魔獣たちを退けるための戦力として、俺たちを一時的に保護する……みたいな感じだな。
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