虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、とにかく戦い続ける

特殊耐久サバイバル部門前篇 その07

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 湖の中央に到達した。
 巨大な蓮の葉の下には、この湖を統べる魔獣の縄張りが存在する。

 闇精霊による探索も、縄張り内では行うことができないようで。
 ──自ら調査を行うべく、湖に入る準備をしていた。

「蓮の葉の裏には陰がある、だから入水自体はどうにかなるな……あとは、魔技でどうにかしようか──“万闇統一”」

 潜る前に周囲に闇を展開、体を包むように形を整えてダイビングスーツ代わりにする。
 この能力の維持は必須、何かあれば脱出することになるだろう。

「それじゃあ行くぞ──『転移』」

 闇がある場所を意識して、自らの影に沈んでいく。
 一瞬、例の影の空間に入った後、再び出てきたときにはそこは水の中。

 エクリの体は呼吸不要、気配を遮断してただ下へ下へと潜るだけ。
 魔物たちの姿は無く、透き通る視界の先に見えるはずの魔獣を目指して進んでいく。

 だが、不思議と魔獣は姿を見せない。
 姿を隠す能力を持っているのか、あるいは一時的に縄張りから離れているのか……死亡レーダーは使えないので、油断せずに探る。

(──“千変宝珠・擬精芯入”)

 探索用に放つ擬似精霊入りの魔力球。
 エクリが生み出してくれた闇の精霊と違って、こちらは本能というものが無いので指示通りに動いてくれる。

 先ほどまでは刺激しての敵視を避けるために使わなかったが、少なくとも特殊な目であるエクリの視界でも認識できない以上、周囲の探索に使うぐらいなら問題無いはず。

 そうして縄張りの範囲にも情報網を広げていき、[マップ]の穴を埋めていく。
 ──だがそれも唐突に、湖の最深部に触れた瞬間に変化が起きた。

(! これは……)

《旦那様、どうやら魔獣は湖底にて休眠していた模様。おそらく、何らかの要因で消耗した体力の回復をしていたのでしょう》

(つまり、刺激しなければ起きなかったが、結局一定時間が経つと活動を再開していたわけだな……うん、俺悪くないよね!)

 冷静に考えてはいけない、眠れる獅子を起こした的な展開だと意識するな。
 すぐに事前に考えていた通り、周囲に巡らせていた闇を使いその場からの脱出を図る。

《旦那様、指示通りに回避をお願いします。迎撃が開始されました》

(了解だ!)

 眠っていた魔獣による攻撃。
 それは膨大な量の水を放つというもの。
 とても単純ながら、量と勢いが相当なものなので直撃すれば普通に死にかねない。

 闇に引っ張ってもらい、全力で浮上を試みながら回避を行う。
 それでも縄張りの範囲外からは出ない──周囲を魔物たちが取り囲んでいるからだ。

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