虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、とにかく戦い続ける

特殊耐久サバイバル部門前篇 その06

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 透き通った綺麗な湖……ただし、くっきりはっきり巨大な魔物が蔓延っている。
 いちおう蓮の葉という足場はあるが、対策もないヤツは餌のように喰われる仕様だ。

「──擬似スキル隠蔽、隠密っと」

 気配を消すスキルに加え、動きに伴うその周囲の変化を抑え込むスキル──を文字通り体得した擬似スキルを起動する。

 システムとして認証されたものではない、技能であり技術。
 レベルも補正も無いのだが、ただ歩くだけでも洗練された足運びを無意識で行える。

「……おおっ、蓮の葉に乗るのってオンゲーとかだとよくあるヤツだけど、実際にやったことなかったんだよな。うん、これが揺れればそりゃあ気づかれるわ」

 湖に点在する蓮の葉、そこに陸生の個体が乗れば僅かながらに揺れてしまう。
 水中の魔物たちは、それを感知して襲うという仕様だ。

 対策としては慎重に渡る、武技や魔技などで重量を軽減しておくなどが挙げられる。
 ……そう考えると、さっき喰われた奴はよくぞ建物を置くところまで行けたよな。

「ああいや、むしろ時間切れで蓮の葉が揺れたってパターンかな? まあ、もう居ないヤツのことを考えてもしょうがないな」

 蓮の葉から蓮の葉へ、慎重に渡っていく。
 精気力や魔力を用いた水上歩行なども可能ではあるが、水面をまったく揺らさずにとはいかないので移動はあくまで蓮の葉を使う。

《旦那様、あちらはモドキです》

「おっと、危ない危ない」

 蓮の葉の中には、上に乗った生物を捕食する食人植物も混ざっているようで。
 生物が乗るその瞬間まで、擬態して気づかせない厄介な能力まで持っているらしい。

 それでも、『SEBAS』とエクリの感知によりそれらを先んじて発見。
 俺はその蓮の葉モドキを使わず、別の場所から湖を渡っていく。

 ──目的地は湖の中央、そこだけはある理由で魔物たちが近づくことが無い。

  ◆   □   ◆   □   ◆

「……よっと。おー、ようやく意識を緩めることができるな」

 発動し続けていた擬似スキルを解除し、俺自身での体操縦を再開する。
 そこは湖の中央──そして、魔獣が自らの縄張りとして支配する場所でもあった。

「この特大サイズの蓮の葉の下、円柱みたいな感じで展開されている領域の奥底に魔獣が居るんだよな」

《間違いありません。精霊による探索をエクリが行っておりましたが、この場所だけ精霊たちが怯えて内部へ侵入できませんでした》

 湖っていう領域全体はともかく、縄張りともなるとダメなのか。
 ちなみにだが、湖は大半が水の精霊で溢れている……火の精霊など絶無だな。

 つまり精霊を用いた探索をするとき、その比率で探索している者に気づかれる可能性があるというわけだ。

「ここからは自分で行かないといけないわけだ……よし、行こうか」

 移動の間に、ある程度策は練ってある。
 魔獣がどれほどの強さなのか、自分の目で確かめにいこう。

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