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DIY、とにかく戦い続ける
闘技大会無制限部門後篇 その35
しおりを挟むもともと俺を覆う、巨人サイズの外骨格のようだった[アライバー]。
それがアリアによって、彼女の霊体を包む兵装と化した。
彼女が九拿と闘い、俺が五感を狂わす術式でその補助をする。
通じてはいないものの、意識の集中を阻害して結果的にはサポートできていた。
「“忍織貼替・夢想幻痛”」
「ッ!?」
五感を弄るということは、つまり痛覚──痛いと感じる感覚も操作できるということ。
相手が相手なだけに、完全に痛みを通すことは無いだろうが……痒い、ぐらいにはな。
そして、普段は痛覚をさして気にしないであろう九拿に効くソレは、アリアが攻撃を行う際に致命的な隙を作り出す。
「左腕破壊──成功」
「……邪魔!」
九拿が振り払おうとする腕にアリアが組み付き、彼女自身の膂力を利用して腕を折る。
その報復に、アリアは妖刀の柄でぶん殴られたが……“死機供存”で修復していく。
結果、九拿は脱臼骨折となり自然な回復ではそれを治せない状態に。
直せば治せるのだが、それを阻止するのが俺の役目でもある。
「──[モルメス]」
接近し、握り締めたメスを振るう。
貧弱な肉体スペック、そして今は死ぬことも可能な限り避けなくてはならない状態。
それでも、戦闘データをリンクしているアリアがサポートし、表皮をなぞる程度には当てることに成功した。
ダメージなどほぼ皆無。
システム的に『闘匠』と『貧弱な武力』により、防御無視かつ固定ダメージ1が通るがそれだけ……それでも、入ってはいる。
「そんなの、効かな……ッ!?」
「筋弛緩剤です、それもとびっきりのね」
液体としてメスに塗っていたそれが、彼女の体から力を奪い去る。
脱獄時に『騎士王』を被曝状態にしたのと同様、科学的に精製された薬物。
アリアの力学に基づいた関節技が通じたように、神子と言えども人の姿と生態を持つ彼女に薬物は通じる……ただし、一瞬だけ。
「右腕破壊──失敗」
「ふぅ、ふぅ……『こく、めい』!」
追い込み過ぎたのだろう、荒い息を吐きながら九拿は妖刀を振り回す──口で。
しかも妖刀再現の能力により、刃の大きさは舞台の端から端まで届くものとなって。
アリアは上空へ回避、俺は『SEBAS』が素早く体を動かして上半身を逸らす。
連続して振るわれることはなかったため、すぐに元の状態に戻して現状把握に努めた。
「筋弛緩剤は通じたはずですが……まさか、その影響を腕の範囲で強引に留めた!?」
だらんと垂れた腕は、たしかに薬物の効果が通じている証。
だがそれ以外の部位が、力を緩ませているとは思えなかった。
両腕が使えなくなった状態の方が、全身が弛緩した状態よりもマシと判断したのか。
それを即決できる判断力、これも神子の力なのだろうか……。
「ある意味、濃縮された分だけ弛緩する時間も延びた……と思うのは無駄でしょうね。アリア、通じていないものと判断して対処をお願いします」
「了解──任務を続行する」
最後の最後まで油断してはいけない、このほんの一瞬でも集中し続ける。
再び“忍織貼替”を展開、九拿を倒すためにできることを実行していく。
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