虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、とにかく戦い続ける

闘技大会無制限部門後篇 その33

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 命を絞る妖刀……のようなナニカを投擲して、一火に食らわせた。
 人形の付喪神にして式神の彼女だが、それでも効果は覿面らしい。

『……ぐ、うぅ……』

 何らかの形で、他の式神たちから力を受け取り強化されていた一火。
 だが今はとても弱々しく、妖刀を引き抜くだけで精いっぱいとなっていた。

『これは……なんじゃ? 妖刀のように見えて、ただの力の塊か……』

 妖刀ではない以上、九拿の持つ妖刀の糧にすることはできない。
 かといって、それを利用して攻撃などもできない……俺の意思ですぐ消せるからな。

『くっ、こんな物!』

『──隙ありです』

『そう何度も通じると……なんじゃと!?』

 妖刀を壊すこともできず、舞台の外に投げつけるだけ。
 だがそのほんの一瞬、気が逸れたところを狙ってカエンが動き出す。

 自らの体となっている液状金属を急激に流動させ、一火の周りを囲む。
 これまでもそういったことは行われていたのだが、今回はここにもう一工夫。

 金属で構築された無数の武器、その一つひとつが仄かに燐光を放っている。
 その正体は武技のエフェクト──つまり、創った武器すべてが同時に武技を展開した。

『寸分違わず、最適な量の精気力を籠めて用いれば、このようなこともできますよ』

『……ッ!』

 結果は言うまでもなく、隠し札を持っていたカエンが一火を抑えることに成功する。
 そして、そのまま一火の方も力尽き──舞台から退場となった。

 あえて残すという考えもあったのだが、それはそれで式神という使い魔的存在が居ることで『陰陽師』がそれを悪用しかねなかったので、割り切って退場させる。

「──カエン、すぐに『陰陽師』の牽制へ。予想通り、出力が増加しています」

『畏まりました』

「すみません、一火を退場させた直後に。ですが、アレは不味い……」

 この時、上空での戦いに変化が起きた。
 一火が消えた分、『陰陽師』の中で余裕が生まれたのだろう……展開する符の数が一気に増え、エクリがその対処に追われる。

 これまでは対処した後に反撃することができていたのだが、それをする余裕も消され防戦一方となっていた。

 なので、休ませる間もなくカエンをそこに派遣して手伝ってもらう。
 九拿の方にスイッチしてもらってもいいのだが……そこは、俺が何とかしよう。

「アリア、アレを使うかは貴女の意思に委ねましょう。私はただ、組み込んだだけ。命令とは言いません、望むままに……今、そちらへ向かいます」

 何度も言うが、これは闘技大会で倒すべきは『陰陽師』だ。
 しかし、彼女を倒すためにはおそらく何らかの鍵が必要となる。

 そして、俺はそれが九拿も退場させることだと思っていた。
 …………これまでの経験が、悪寒がそうさせるんだよな。

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