上 下
196 / 2,752
DIY、山に登る

仙王 その02

しおりを挟む


 説明のしようがなかった。
 彼女は彼女なりに職務を全うしているだけであり、何も悪くはない。

 ──ただ、タイミングと来訪者が悪かっただけなのだ。

 タイミングはちょうど、『闘仙』が上司に拘束されているということ。
 来訪者に関しては……うん、特に言う必要もないか。

「どうして遠い目で空を見ているんですか。大人しくお縄に付いてください」

「ふぇーん、どうしたらいいんだよー」

 ウサ耳少女──まあ、少女と言っても中学生ぐらいの背丈だが──に捕まる絵面は、さすがに子供たちに顔向けできなくなってしまいそうだ。

 前にも似たような展開が合った気もするんだが、俺って侵入者に間違えられやすい体質なのかな?

「さぁ、ゆっくりと手を上げて膝を着け──そうはさせません!」

「グハッ!」

 どこかで見たアニメのように、そのままクラウチングスタートで逃げようとしたが、即座に見抜かれて縄を投げられる。
 どこから縄なんて……と思ったが、何やらモクモクとした雲のような不思議な材質でできていた。

 仙人が居る場所だし、雲とか霞とかなんだろうか。

「ふっふっふ、雲縄から逃れられると思わないでください……って、あれー?」

「へー、『ウンジョウ』って言うのか。雲の縄で雲縄ですか? なかなか解きづらい縄ですけれど……私にかかれば余裕ですね」

「そんなっ! 結界を破れる刺客は、これほどまでに実力を持っているのですか!」

 自由になった体を解していると、その様子にウサ耳少女はショックを受けていた。
 そして、そんな少女の姿に若干の精神的ダメージが俺に入る。

 ……いえ、実力なんてありませんから。
 というより、解いていませんよ。

 毎度お馴染みの死に戻り、ちょんと自傷で死んだらリセット──はい、脱出。
 肉体が再構成される際に、縄は邪魔なものとして排除された。

 本物の縄であれば足元に落ちるのだが、彼女の能力か何かで生成されたと思われる縄はそのまま消滅した。
 捕縛対象がいなくなったので、役目を果たして消えたのだろう。

「……さて、君は私を捕まえられない。それは分かったでしょう? だからせめて、一度その『闘仙』さんにアポを取ってくれないでしょうか。それで、この問題も解決す──」

「ううん、ここで私が諦めたら誰がこの街を守るの? ……いっぱいいるけど。たとえ私が負けようと、第二第三の警邏隊が……」

「いや、だからその、アポを取って──」

「ええい勝負です! 街に行きたければ、この私を倒してからにしてください!」

「だから、話を聞けと言ってるでしょう!」

 ダメだ、ウサ耳少女はカッコイイ台詞セリフを言う自分に酔っている。
 ハァ……、またこのパターンになるのか。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~

山田 武
ファンタジー
テンプレのように異世界にクラスごと召喚された主人公──イム。 与えられた力は面倒臭がりな彼に合った能力──睡眠に関するもの……そして催眠魔法。 そんな力を使いこなし、のらりくらりと異世界を生きていく。 「──誰か、養ってくれない?」 この物語は催眠の力をR18指定……ではなく自身の自堕落ライフのために使う、一人の少年の引き籠もり譚。

異世界行ったらステータス最弱の上にジョブが謎過ぎたからスローライフ隠居してたはずなのに、気づいたらヤバいことになってた

カホ
ファンタジー
タイトル通りに進む予定です。 キャッチコピー 「チートはもうお腹いっぱいです」 ちょっと今まで投稿した作品を整理しようと思ってます。今読んでくださっている方、これから読もうとしていらっしゃる方、ご指摘があればどなたでも感想をください!参考にします! 注)感想のネタバレ処理をしていません。感想を読まれる方は十分気をつけてください(ギャフン

神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜

FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio 通称、【GKM】 これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。 世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。 その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。 この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。 その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する

こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」 そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。 だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。 「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」 窮地に追い込まれたフォーレスト。 だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。 こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。 これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

Free Emblem On-line

ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。 VRMMO『Free Emblem Online』 通称『F.E.O』 自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。 ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。 そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。 なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

World of Fantasia

神代 コウ
ファンタジー
ゲームでファンタジーをするのではなく、人がファンタジーできる世界、それがWorld of Fantasia(ワールド オブ ファンタジア)通称WoF。 世界のアクティブユーザー数が3000万人を超える人気VR MMO RPG。 圧倒的な自由度と多彩なクラス、そして成長し続けるNPC達のAI技術。 そこにはまるでファンタジーの世界で、新たな人生を送っているかのような感覚にすらなる魅力がある。 現実の世界で迷い・躓き・無駄な時間を過ごしてきた慎(しん)はゲーム中、あるバグに遭遇し気絶してしまう。彼はゲームの世界と現実の世界を行き来できるようになっていた。 2つの世界を行き来できる人物を狙う者。現実の世界に現れるゲームのモンスター。 世界的人気作WoFに起きている問題を探る、ユーザー達のファンタジア、ここに開演。

処理中です...