虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
195 / 2,810
DIY、山に登る

仙王 その01

しおりを挟む


「ひえー、でも遠い!」

 中華風、とでも言えば良いのだろうか。
 双眼鏡の形をした、遠視の魔道具を使ってその街の様子を見ていた。
 中華街にでも来たように思えるほど、色鮮やかな塗色がされた建物が建ち並ぶ。

「まあ、それも本当に一部だけだが」

 街の中央から一番大きな宮殿にかけて、そういった様式だが……そこから外れた場所にある建物はすべて、質素な建物だった。
 色も大人しめの色が多いし──自然と同化した小さな小屋、みたいな感じのが基本だ。

「小さな街で、良くぞここまで纏められましたって感じだな。『闘仙』ならやっぱり一番大きな宮殿か、どこかの小屋辺りか? どちらにせよ、行ってみないと分からないけど」

 この二パターンしかないだろう。
 それは、創作物が証明しているうえ、これまでやってきたEHOというゲームそのものが教えてくれる。

「……にしても、霧が濃くなってきてるな」

 街には霧がかかっていき、双眼鏡は視界を確保できなくなっていった。
 一度双眼鏡を片付け、光学迷彩装置を起動すると街に向かう。



 街に着きたかった・・・・
 ……はい、願望系です。

「逃げるな、この侵入者めっ!」

「待って、ちょっと待ってください!」

「ええい、うるさい! 貴方も九龍帝国のスパイなのでしょう!」

「いや、知りませんからそのような国!」

 歩いている途中、霧の中を通ろうとしたら装置が誤作動を起こして故障した。
 どうやら高濃度の魔力とは違うエネルギーらしく、誤ってそれを吸い込んだ装置が還元できずにエラーを起こしてしまったそうだ。

 なのでいったん『SEBAS』に任せ、エネルギー問題が解決するまでは装置なしでの活動となってしまう。

 誰とも会わずにこっそりと移動したいな、などという甘ったれた願い事はあっさりと叶わぬことを知り、現在街から来たと思われる警備兵からの逃走を図っていた。

 警備兵、といっても本人が警備が云々言っていたからそう例えただけで、実際はどうだか分からない。
 背中にまで届く白い長髪、ゆったりとした薄い半透明の布を羽織る──ウサ耳の少女。

 そう、俺を追いかけて来るのは、いわゆる兎っ娘というヤツであった。

「……って、現実逃避をしている暇は無かったんだ。どうにかして、宥めないと」

「やっと逃げるのを諦めましたか。【仙王】様の結界に反応があったというので来てみましたが……まさか、本当に結界を破れるようなスパイを送り込んでくるとは」

「いや待てくださいって、私は『闘仙』さんに呼ばれて来たんですって」

「嘘を吐いても無駄ですよ! あの方は今、【仙王】様に拘束されてお説教中の真っ最中です! そんな状態で、いったいどうして他者をこの街に招けるというのですか!」

 ……おーい、遊びに来たよー。
 お迎えはまだ? 『闘仙』さーん。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」  騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。  この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。  ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。  これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。  だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。  僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。 「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」 「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」  そうして追放された僕であったが――  自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。  その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。    一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。 「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」  これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。

処理中です...