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DIY、とにかく戦い続ける
闘技大会無制限部門後篇 その26
しおりを挟む人造固有種[ガルマカルダ]に、敵味方無差別に巻き込む火を噴かせた。
結界で保護された俺たち、そして何らかの策を持つ『陰陽師』には届かない。
「──ですが、貴方がたは別ですよね」
『……ッ!』
それは式神少女たち。
九拿という例外を除き、まだこの場に居た彼女たち全員が手酷い火傷を負っている。
加えて、[ガルマカルダ]固有の能力による状態異常の強制付与。
その内容はランダムだが、それぞれ重度のダメージであることに変わりはない。
そして、そんな隙を突かないほどこちらも甘くは無かった。
すぐさまアリア、カエンが攻撃に移り──二羅、三稀、四瑠、六緒、七藻を倒す。
「それでも貴方だけは残りますか……大したものです、一火さん」
「……これでも、長女なのでな。妹たちにはきちんと、慕われておるんじゃよ」
「…………差し替え、移譲ですか。ええ、とても慕われておられる」
要するに肩代わり、一火の受けた状態異常やダメージを他の式神少女たちが庇った。
重症な面々を残すより、一人をほぼ万全な状態で残す……そんな選択肢を取ったのだ。
「残すは一火さん、九拿、そして『陰陽師』さん……四対三、とは言い難いですが、それでも数は減らせました。[ガルマカルダ]、ご苦労様でした」
『ピィ!』
妖刀で蘇生されていた[ガルマカルダ]、その時間切れとなり退場となる。
これで人数としては優勢、まあ相手はいくらでも式神を出せるので油断はできないが。
「『陰陽師』さん、まだ上空で待機なされますか? いやまあ、別にそのままでも構いませんが……いくらでも攻撃できますよ?」
「……嫌なこと言いはる」
「そうでもしないと、勝てませんので──ああそうだ、返してもらいますよ。ソレ」
未だに『陰陽師』の体を刺し貫いていた妖刀、[宿業]の返却を求める。
とはいっても、抜いたら抜いたで出血するだろうからそのままだったのだろうが。
しかし、そんな事情は知ったことではないので強制回収を実行する。
やり方は単純、[インベントリ]を操作して装備の切り替えを──
「……って、アレ?」
「どうしたん? これ、持っていかんの?」
「ずいぶんと余裕そうですね」
「実際、余裕やし」
理屈はどうあれ、強制回収はできなくなってしまった。
また、[宿業]も奪われてしまう……使うことはできずとも、彼女にはアレがある。
「九拿、これも喰っとき」
「ん、分かった」
余裕綽々で妖刀を引き抜き、ポイっと空から投げ捨てる『陰陽師』。
その先では九拿が妖刀を握り締め、糧にしようと待ち構えていた。
「──エクリ!」
「はい!」
「もう遅いやろ」
「いえいえ、これも計画通りですので。問題ありませんよ──“閃の嵐刀兎”」
九拿の速度はそれこそ神懸っていたが、それよりも早く妖刀に嵐の力が宿り暴れることで破壊を阻止──そこにエクリが追い付き、九拿自身の行動を阻害する。
その間に、妖刀から飛び出した兎の一匹が妖刀を持ち上げ、俺の下へ持ってきた。
途中、一火も動こうとしていたが……そこはカエンが邪魔をしてくれる。
「お帰りなさい、[宿業]。すぐに戻れるようにしますからね…………って、おっと」
何やら絡みついている封印の術式が、先ほどまでの阻害をしていたと判断。
すぐに『SEBAS』に何とかしてもらおうと思ったが……妖刀が自力で対処。
うん、俺の命を糧に出力を上げて強引に突破したようだ。
それはいいんだけど……滞在できる寿命、さらに縮まったよ。
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