虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、とにかく戦い続ける

闘技大会無制限部門後篇 その24

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 ある方法で上空の『陰陽師』の下へ、式神少女たちを掻い潜り到達。
 心臓に刀を一突きし、居合斬りで細切れにされて墜落──その最中、俺は呟いた。

「──“閃の嵐刀兎マガツミカヅチ”」

「ッ……!?」

 ソレは俺を始点とせず、能力を行使する。
 落ちていく俺が目にできた、上空で始まった嵐のような光景。

 ──『旋嶷武雷[マガツミカヅチ]』。

 アイスプルの住民の一人で、意思を持った妖刀である。
 そんな個体が有する、最大火力の能力こそが先の一撃だ。

 嵐が吹き荒れ、雷が鳴り響く。
 辰の式神少女五恵、亀の式神少女八倶、そして『陰陽師』たちはその嵐の中心で現在、無数の斬撃に切り刻まれている。

 元は雷の性質を秘めているのみの妖刀。
 だが、アイスプルの住民たちと同じ場所に存在したことで、二つの性質が宿った。

 一つは風、それは彼らが崇める存在の力を体現するために。
 そしてもう一つ、彼らの崇める存在の姿を体現する性質が。

「うん、何ともシュールですね……兎たちによる惨殺劇というのも」

 そう、住民たちのほとんどが厚く慕うその存在──風兎。
 その性質を強く宿した結果、嵐を操る兎としての力を手に入れたのだ。

 そんなこんなで、“閃の嵐刀兎”は発動すると無数の兎が現れて刀を振り回す。
 風と雷の性質を併せ持つ、嵐の力によって敵対者を呑み込むのだ。

「私が使ったからこそ、妖刀を媒介にしなければなりませんでしたが……実際には、どこからでも出せますからね、アレ。本当に、凄まじいものです」

 前提を伴わない、固有種の必殺技のみを引き出す人造遺製具『無形受器ブランク』。
 それにより、代償を支払い発動したわけだが……本番はここから。

「九拿の妖刀は不壊の物、ですがそれしか存在しないわけでもありませんからね……さあ出番ですよ、[宿業]──『死ニ戻リ』!」

 嵐の中の状況は分からなかった。
 だが試合が終わっていない以上、何らかの方法で『陰陽師』は生き残っている。

 式神少女たちと立ち位置を替える、というやり方では無いことだけは分かっていた。
 なので攻撃の手を止めず、倒れるまでやり続けるのみ。

 先ほど差し込んだ刀は妖刀、それも九拿の物と同じく不壊の性質を宿したもの。
 加えて、その妖刀固有の能力として、とんでもない力を秘めている。

「今回は貴方にお願いするとしましょう──『赤迦灼羅[ガルマカルダ]』、出番です」

『──ピィ!』

 妖刀は俺の命を糧として、かつて俺が殺した存在を呼び出すことができる。
 こちらもまた、燃費が最悪なのだが……事前に充填し、短期間なら無償にしておいた。

 さて、そうして呼び出されたその個体は嵐の中を突っ切り更に上空から姿を現す。
 とても可愛らしい声を上げる小鳥……その見た目に騙されてはいけないぞ。

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