虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
2,644 / 2,812
DIY、とにかく戦い続ける

闘技大会無制限部門後篇 その22

しおりを挟む


 俺、アリア、そしてカエンが『陰陽師』に向けて動いていたその時──舞台端で行われていた戦いの余波が、辺り一帯を襲った。

「これは……九拿ですか!」

 強烈な衝撃波が、舞台とそれを覆う結界の中で暴れ回る。
 地上に居る俺やカエン、そして宙に居るアリア、そして『陰陽師』と式神たち。

 その全員にその影響が伝わっていた。
 辰の式神に乗った『陰陽師』たちは体勢を崩し、カエンや地上の式神たちは吹き飛ばされないよう身を屈めている。

 俺は俺で影響自体は受けているのだが、ある意味ノーダメージ。
 吹き飛ばされることも無く、ただ大きく変化する状況を見ているだけ。

「あの妖刀は……またこれまでに使っていたものとは違うのでしょうね、いったい、どれだけの妖刀を喰らわせたのやら」

 迷宮の核となっていた、あらゆる妖刀を糧として成長する禍業物。
 核の性質からか、決して壊れないその頑丈な妖刀を神子である九拿が振り回す。

 それだけでも厄介だというのに、喰らった妖刀の能力を再現できる機能も持っていた。
 当然、使用にあたり相当量の妖刀を喰らわせていることだろう……彼女なら絶対やる。

「不味い……カエン、アリア!」

 これを引き起こしたのは『陰陽師』の式神である九拿であり、式神たちはその主を通じてその情報を知ることができた。

 まあ、対策をしたところで絶対防御の類いでも影響をゼロにというのは難しい。
 今の俺にも影響そのものはあったのだ、間違いないだろう。

 それはともかく、要は受けた後の立ち直りならば何とかできるということだ。
 事実、余波で壊され墜落したドローンが、その光景を映し出していた。

『────』

「隙だらけにゃ!」
「右に同じ、コン!」

「ぐぅ……!?」

「ほれほれ、どうしたどうした!」

 宙を舞うアリアはどんどん『陰陽師』から遠ざけられ、カエンも液体金属の少ない部分から攻撃を受けてしまっている。

 その一方で、念入りな準備を終えたであろう『陰陽師』は空から紙吹雪を降らす。
 それらは一枚一枚がお札であり、符として機能する符術でもある。

「──“千羽鶴翼”」

 宙を舞っていた符たちが、『陰陽師』の発動した何らかの力の影響を受けた。
 紙は勝手に折り畳まり、鶴のような姿を成して飛び始める。

 それらは統率の取れた形で動き始め、主にアリアとカエンの下へ突っ込んでいく。
 ──周囲に居る式神たちも、その対象範囲な気がするけど。

「ちょ、主様!?」
「というか、さっきもじゃが巻き込まないで欲しいのじゃ!!」

 鶴がどこかに接触すると、中に封じられた術式が発動するようだ。
 そしてその影響を受けた符もまた、連鎖するように起動して辺りに被害を及ぼす。

 ──空を飛ぶ鶴はまだ居り、『陰陽師』の下へ向かうのは更に困難となった。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!

七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ? 俺はいったい、どうなっているんだ。 真実の愛を取り戻したいだけなのに。

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

処理中です...