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DIY、とにかく戦い続ける
闘技大会無制限部門後篇 その22
しおりを挟む俺、アリア、そしてカエンが『陰陽師』に向けて動いていたその時──舞台端で行われていた戦いの余波が、辺り一帯を襲った。
「これは……九拿ですか!」
強烈な衝撃波が、舞台とそれを覆う結界の中で暴れ回る。
地上に居る俺やカエン、そして宙に居るアリア、そして『陰陽師』と式神たち。
その全員にその影響が伝わっていた。
辰の式神に乗った『陰陽師』たちは体勢を崩し、カエンや地上の式神たちは吹き飛ばされないよう身を屈めている。
俺は俺で影響自体は受けているのだが、ある意味ノーダメージ。
吹き飛ばされることも無く、ただ大きく変化する状況を見ているだけ。
「あの妖刀は……またこれまでに使っていたものとは違うのでしょうね、いったい、どれだけの妖刀を喰らわせたのやら」
迷宮の核となっていた、あらゆる妖刀を糧として成長する禍業物。
核の性質からか、決して壊れないその頑丈な妖刀を神子である九拿が振り回す。
それだけでも厄介だというのに、喰らった妖刀の能力を再現できる機能も持っていた。
当然、使用にあたり相当量の妖刀を喰らわせていることだろう……彼女なら絶対やる。
「不味い……カエン、アリア!」
これを引き起こしたのは『陰陽師』の式神である九拿であり、式神たちはその主を通じてその情報を知ることができた。
まあ、対策をしたところで絶対防御の類いでも影響をゼロにというのは難しい。
今の俺にも影響そのものはあったのだ、間違いないだろう。
それはともかく、要は受けた後の立ち直りならば何とかできるということだ。
事実、余波で壊され墜落したドローンが、その光景を映し出していた。
『────』
「隙だらけにゃ!」
「右に同じ、コン!」
「ぐぅ……!?」
「ほれほれ、どうしたどうした!」
宙を舞うアリアはどんどん『陰陽師』から遠ざけられ、カエンも液体金属の少ない部分から攻撃を受けてしまっている。
その一方で、念入りな準備を終えたであろう『陰陽師』は空から紙吹雪を降らす。
それらは一枚一枚がお札であり、符として機能する符術でもある。
「──“千羽鶴翼”」
宙を舞っていた符たちが、『陰陽師』の発動した何らかの力の影響を受けた。
紙は勝手に折り畳まり、鶴のような姿を成して飛び始める。
それらは統率の取れた形で動き始め、主にアリアとカエンの下へ突っ込んでいく。
──周囲に居る式神たちも、その対象範囲な気がするけど。
「ちょ、主様!?」
「というか、さっきもじゃが巻き込まないで欲しいのじゃ!!」
鶴がどこかに接触すると、中に封じられた術式が発動するようだ。
そしてその影響を受けた符もまた、連鎖するように起動して辺りに被害を及ぼす。
──空を飛ぶ鶴はまだ居り、『陰陽師』の下へ向かうのは更に困難となった。
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