虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
2,643 / 2,831
DIY、とにかく戦い続ける

闘技大会無制限部門後篇 その21

しおりを挟む


 適性皆無な俺でも用意できた、数少ない援軍の一人。
 俺の愛機に宿ったその人格に、アリスと名付け──出撃する。

「な、なんじゃコヤツ!?」

『──『ビームブレイド』抜剣』

 カエンを相手取っていた式神の一人、人形の付喪神たる少女が驚き慌てふためく。
 機体は俺が何をするまでもなく、剣身が光で構築された武装を展開し──振るう。

 式神たちはそれを受け止めず、すぐさま回避行動に移った。
 それが危険だと判断したのだろう、だがそれだけでは足りない。

『『ロックオンレーザー』、“決死必敵デッドロック”』

 アリア、そう名付けられた人格の基となった魂魄がかつて就いていた職業【神風兵】。
 その職業の特異さ、何より俺の下に行きつくまでの過程がそうさせたのだろう。

 今なお、焼き付いた魂魄は【神風兵】の職業能力を行使することができた。
 そしてそれは、[アライバー]そのものに搭載された機能と組み合わさっている。

 本来、一つの対象にのみ施すことができる“決死必敵”。
 それを『ロックオンレーザー』により式神たち全員を対象化、ターゲットに指定した。

「……というかまあ、普通に喋ってるな」

 明らかに[アライバー]の装備の名称も言えているし、過去の台詞をそっくりそのままなぞっている……というわけでもない。

 名付けにより、音声を出すことができるようになったのだろう。
 ……今までも実はできていた、なんて話は聞きたくない。

 ビームブレイドを振るった後、アリアは上空へ向かおうとする。
 だが、式神たちもそれを防ごうとし──金属の壁に阻まれた。

「行ってください!」

『────』

 カエンが自らに置換している液体金属を操り、道を創り上げたのだ。
 アリアはがら空きになった道を通り、上空に居る『陰陽師』の下へ。

 一方、地上に居た式神たちもただ黙ってそれを通すわけではない。
 カエンの妨害を躱し、アリアを主の下へ向かわせないために動く。

「合わせよ、四瑠! 二羅、六緒は行け!」

「ええはい、分かりましたよ!」

 式神の一人、鬼の少女の下へ向かう猫と兎の少女たち。
 その両腕に呼ばれた少女たちが乗ると、力強く空へ打ち上げられた。

 カエンもある程度高めに設定していた壁。
 だがそれ以上の高さで少女たちは飛んでいき、アリアに攻撃を行う。

 それ自体はアリアも機体の向きを変えて防いだのだが、推進は止まり『陰陽師』を攻撃できなくなってしまった。

「……やはり、一火はここぞという時に頼りにされているようですね。カエン、彼女を優先して排除できるか狙ってみてください」

『はい、了解しました』

 念話を通じ、カエンに対象を指定。
 地上で蠢く液体金属が、少しずつ一火を優先して狙うように。

 上空でもアリアを妨害するため、空中を蹴り仕掛けていく二人の式神少女。
 それを迎え撃つため、機体の武装を展開するアリア。

 ──そのすべてを無茶苦茶にする、強烈な一撃が舞台の端から放たれた。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

てめぇの所為だよ

章槻雅希
ファンタジー
王太子ウルリコは政略によって結ばれた婚約が気に食わなかった。それを隠そうともせずに臨んだ婚約者エウフェミアとの茶会で彼は自分ばかりが貧乏くじを引いたと彼女を責める。しかし、見事に返り討ちに遭うのだった。 『小説家になろう』様・『アルファポリス』様の重複投稿、自サイトにも掲載。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷

くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。 怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。 最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。 その要因は手に持つ箱。 ゲーム、Anotherfantasia 体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。 「このゲームがなんぼのもんよ!!!」 怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。 「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」 ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。 それは、翠の想像を上回った。 「これが………ゲーム………?」 現実離れした世界観。 でも、確かに感じるのは現実だった。 初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。 楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。 【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】 翠は、柔らかく笑うのだった。

私はいけにえ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」  ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。  私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。 ****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。

【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?

つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです! 文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか! 結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。 目を覚ましたら幼い自分の姿が……。 何故か十二歳に巻き戻っていたのです。 最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。 そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか? 他サイトにも公開中。

処理中です...