虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
2,638 / 2,812
DIY、とにかく戦い続ける

闘技大会無制限部門後篇 その16

しおりを挟む


 場外についての確認。
 創作物の知識から、舞台外の地面を相手にぶつけた場合に退場扱いなのかを聞いてみたが……残念ながら無意味なようだ。

《ですが、まったく無意味というわけでもないようです。地面をそのまま押し付けるという方法はダメでも、場外に出た者に対して地面と接触している足場を押し付けることで、退場扱いにできるとのことです》

「……えっと、どういうことだ?」

《床だけでなくその下の地面ごと、宙に浮くことで場外扱いを回避した者に当てれば退場させられる可能性がございます》

「ふむ……考慮に入れておかないとな」

 俺がそんなアクロバティックな回避方法を取れるかはともかく、式神たちの何人かがそうするかもしれない。

 また、マイとの試合時同様に、辰の式神に乗って宙を移動する可能性もある。
 その際に舞台からはみ出ていれば、そこに床をぶつけて退場にできるわけだ。

「まあ、それができるとしても、基本的には地面を操作しないと難しいよな。うちに地面に特化した使い手とか居たっけ?」

《特化はしておりませんが、カエンやエクリであれば問題なく可能です》

「そうだな、二人ならできそうだ」

 錬金術の産物で、錬産術なども使える特異なゴーレムのカエン。
 そして錬産術だけでなく、俺の持つ様々な技術を注ぎ込んだ遺製具産の人形エクリ。

 結果的に方法は違えど、地面を上昇させるぐらいはできるだろう。
 彼らを呼び出し、代わりにやってもらうというのも悪くは無いだろう。

「なら、それも考えておくとして……そうだな、問題は俺のキャパシティか」

《はい。形式上とはいえ、正式に使役していない従魔は一定時間場に留めておくことができません。彼の[ミュチ・ユアル]は擬似的に支配下に収められておりましたが、旦那様にはその許しも降りないでしょう》

「星公認だからこそできた荒業なわけだ。これについては、『陰陽師』もやらないはず。というか、神子である九拿が居ればそんなことせずとも勝てるわけだし」

 式神に限り、何体でも契約することができるのが『陰陽師』の権能の一つ。
 では、契約と使役が同じかというと……答えは否。

 契約したうえで、使役するためのキャパシティを状況に応じて空けなければならない。
 式神九人を同時に出す、それそのものは紛れも無い彼女自身の素質によるものだ。

「一方の俺は、俺自身のキャパシティが少ないから数で攻めることは困難だしな。上級職とかに就けていればよかったんだが……まだだったしな」

 従魔に関する職業は、やはりそちらに関する適性も就職条件に含まれている。
 ……精霊やら死霊やら同様に、大半の従魔に関する適性が俺には無いんだよな。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!

七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ? 俺はいったい、どうなっているんだ。 真実の愛を取り戻したいだけなのに。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

処理中です...