虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、とにかく戦い続ける

闘技大会無制限部門後篇 その09

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 擬・武神流の一つ、電気による麻痺硬直狙いも失敗した。
 体の操作は『SEBAS』が行い、俺は魔力で生み出された腕を伸ばし始める。

《体の動きを気にしなくていい今だから、十本同時にできるけど……『SEBAS』、あと何本出せる?》

《お望みとあらば、何本でも》

《……いや、緊急時に備えてキャパシティはきちんと残しておこう。今ある分、それでできるだけサポートしてみる》

《ありがとうございます》

 魔力で生み出した腕、それはコスパが悪い代わりに物質に干渉可能だ。
 それを十本、自由自在に操るそれらによって『先読』を追い詰めていく。

「……未来でも、視えているのですか?」

「ははっ、ご冗談を。未来は視るものではありませんよ……積み重ねが、導き出すものだと私は思います」

 要するに、演算処理による未来の推測。
 これまで『先読』が取ってきた動き、加えて言動から分かる性格など……それを集めてきた戦闘データに基づいて処理するのだ。

 あちらもそれはやっていて、『先読』の権能によりシステム補正も働きかなりの精度で導き出している──それを上回っているからこそ、彼女はこちらを訝しんでいる。

 それもこれもすべて、『SEBAS』が俺のサポートをしてくれているから。
 腕を動かすのに最適な軌道も、全部共有している視界内に浮かんでいた。

 ……そのすべてを一度にやっている分、相当な負荷が『SEBAS』に掛かっている。
 当人が大丈夫とは言っているが、それでも早めに蹴りを付けないといけない。

「そういうわけですので、そろそろお開きにさせていただきたく──“千変宝珠・虹”」

「こ、れは……!」

 あらゆる属性、それを魔手のすべてに注ぎ込み光を迸らせる。
 指の触れた先が消滅する、そんな未来を先に視たのか警戒心を露わにする『先読』。

 未来視に対する策の一つ、それは未来を視ても回避できないほどの制圧にして殲滅。
 魔力の供給に応じて魔手は膨れ上がり、巨人サイズにまで至った。

 その過程で俺は死んでいるが、[称号]効果によって仮初の生を確保する。
 彼女にも視えているだろう、時間が切れれば勝手に消えていく俺の姿が。

「さて、貴女が逃げ切るのか私が力尽きるのか……どちらが先でしょうね」

「…………」

「それでは、始めましょうか」

「くっ……!」

 当然、先に動くのは『先読』。
 追いかけるように魔手が伸びていくが、そちらを見ないまま彼女はそれを躱す。

 俺のまた、彼女の軌道から導き出された位置に魔手を先回りさせるが、それもまた回避される──最期の最後は鬼ごっこ、絶対に負けられない遊技ゲームがここにある!

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