2,630 / 2,853
DIY、とにかく戦い続ける
闘技大会無制限部門後篇 その08
しおりを挟む俺を操る結界は、『SEBAS』が遠隔で動かしている。
その結果、俺を視ても運命を観測できず意図せぬ運命視対策となっていた。
だがそれ自体は、戦闘が始まってからずっと続けているのであちらも承知の上。
おそらくは持っているであろう演算的未来視により、時間を掛けこちらを攻めるはず。
「『我が身を厭わず、迸る紫電』」
「……ッ」
唐突に口遊むそれを、これまでの試合で彼女も理解しているのだろう。
擬・武神流、謡うことで魔技にも似た事象の発生が可能となる武技。
先んじて未来を視たのか、彼女は発動後の接触を避け──ようとした。
だがそれは『SEBAS』により、それができないタイミングで行われている。
「ほう、そこまでして避けますか」
「……雷属性の魔力は無かったはず、なぜ麻痺させられるのです」
「それは企業秘密というものですよ」
先ほどの謡、その後者による仕業だ。
彼女がもし触れていた場合、身動きが取れなくなり攻撃を一方的に受けていただろう。
だが彼女は、それをよほど避けたかったのか、予想外の動きで回避を行った。
──可動域を超える、肉体を壊すレベルで腕を振るったのだ。
だがそれ自体はすぐに治す……いや、直すためにもう片方の腕で叩き戻していた。
ジーヂーといい、武闘世界の連中は肉体の構造を知るからこその直し方をするよな。
《旦那様、申し訳ございません。以降はこれらも想定の上で戦闘を続行します》
《いやいや、武闘世界の連中がおかしいだけだからしょうがないさ。むしろ、これを当てていれば勝てたかもしれないわけだし、また繰り返せばいいだけさ》
想定外を想定したうえで戦う、たったそれだけだがとても難しい。
人体の構造を踏まえての動きには、制限があるがそれを無くせば可能性は無限大だ。
それでも『SEBAS』は勝つために、そのすべてを演算して戦ってくれている。
俺にできるのはせめてその助けになる、小さな邪魔くらいだろうか。
「“念動魔手”──」
「…………ッ!?」
「──×10」
うん、やっぱり運命が見えなくても、システムを通じずとも観測できる未来視を持っているみたいだな。
俺の口の動きで何をするかは分かっても、オリジナル術式の内容をすべて把握することはできない……だが彼女は瞬時に現れた十本の魔手を、躱し切っているし。
今回使った“念動魔手”は、いわゆるサイコキネシスを再現した術式だ。
魔力を物質に触れられるレベルで濃くし、動かすだけの──限りなく失敗作。
うん、だってこれ魔力を滅茶苦茶消費する使い勝手が悪い術式だしな。
普通に攻性術式を使った方が早い、あまり意味の無い術式である。
1
お気に入りに追加
648
あなたにおすすめの小説

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~
山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」
母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。
愛人宅に住み屋敷に帰らない父。
生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。
私には母の言葉が理解出来なかった。

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。
了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。
テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。
それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。
やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには?
100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。
200話で完結しました。
今回はあとがきは無しです。

傍観している方が面白いのになぁ。
志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」
とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。
その彼らの様子はまるで……
「茶番というか、喜劇ですね兄さま」
「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」
思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。
これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。
「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。

【完結】会いたいあなたはどこにもいない
野村にれ
恋愛
私の家族は反乱で殺され、私も処刑された。
そして私は家族の罪を暴いた貴族の娘として再び生まれた。
これは足りない罪を償えという意味なのか。
私の会いたいあなたはもうどこにもいないのに。
それでも償いのために生きている。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる