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DIY、とにかく戦い続ける
闘技大会無制限部門後篇 その07
しおりを挟む俺が負けていないのは、ルリの祝福のお陰でもあるらしい。
運命干渉での理不尽な負けは無くなった。
どちらがより先を読めるか、それが鍵だ。
「…………」
「……! ……ッ」
余計なことはせず、結界に弾かれて動く体に身を委ねていく。
それは『SEBAS』によって導き出した最適解、むしろそれ以外は敗北必至だ。
相手は名の通り『先読』に長けている。
運命に干渉して直接選択肢を潰してくる、という方法を取ってこないからこそ、小数点以下でも勝利の可能性が残っていた。
そしてそのか細い可能性を、こちら側で有する無数の策によって広げている。
ルリの祝福、職業能力補正、そして多くの[称号]たち……。
これまで積み重ねてきた経験の賜物。
こちらの運命を視ることができるであろう『先読』は、さぞ驚いていることだろう……何をしても死ぬはずなんだからな。
《【運命王/姫】による観測は、『プログレス:ヴィジョンアイ』で行われる処理と似ております。いえ、正しくはそれを基にした似て非なるもの、といえます》
《…………難しいな。というか、演算処理の方は大丈夫なのか?》
《もっとも懸念していた運命干渉を、奥様の御力で防いでいただけているとのことでしたので。そちらに回していた分、約70%に余裕ができました》
どうやら『SEBAS』でも、素の状態で運命干渉に抗うのは難しいらしい……というか30%は余裕ができるんだな。
まあ、そちらはそちらで俺の体を動かすために使っているのだろうし、余裕というわけでは無いのだろうが。
《『ヴィジョンアイ』ってことは、軌道が見えるタイプか。可能性に応じた色の濃さで見える感じだったが……俺への攻撃と自分への攻撃、今はどう見えているんだ?》
《旦那様への攻撃は、すべてがまったく同じ色に見えています。また、旦那様からの攻撃は見えていないと思われます》
《前者は俺が弱過ぎるから、ってことで分かるんだが……後者はなんでだ? 俺の意思が介入してないからか?》
《その通りです。システムを通じ、相手の動きと結果を読み込んでの投影。ですがそれは誰にでも、何にでも対応しているわけではございません。一部の例外──星に登録されていない存在は含まれません》
いちおう『SEBAS』はセバヌスというアバターを持っているが、今俺の支援を行っている『SEBAS』そのものは、アイスプルで生まれたAI以外の何者でもない。
《だから読み切れてないわけだ……俺を相手にするなら無双できただろうけど、俺じゃなくて『SEBAS』を視ないと、結果を視ることができないと》
《はい。ですがそれでも、直感や天啓に基づいた未来の知覚もあるようでして、発動は常時ではありませんが、それでも攻め切れていない一因となっております》
所々、俺の方が押しているように観客席からは見えるかもしれないが、実際には時間を掛ければ掛けるほどに、戦闘経験を学習して可能となる未来演算の性能が上がっていく。
それはこちらも同じことなのだが、やはり権能として『先読』に長けているあちら側の方が優位なのだ……時間制限もある、どうにかしないとな。
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