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DIY、とにかく戦い続ける

闘技大会無制限部門後篇 その06

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 運命を操ることができる【運命姫】、それが『先読』の就いている職業だった。
 幸いにも抵抗できる[称号]を持っていたので良かったが、厄介なのは変わらない。

「……やはり、間違いありませんね」

「おや、何か分かりましたか?」

 こちらが相手の情報を戦いの中で暴き出しているように、相手もまたこちらの情報を引き出すためにインファイトを行っていた。

 何かを確信した様子で、彼女は距離を取りこちらに話しかけてくる。
 解析の時間はいくらあっても困らない、俺は誘いに乗ることにした。

「後ほど、そちらから伝えてくるはずでしたので言いましょう。予想通り私は【運命姫】に就いております。ですが、一つ勘違いしているようですので訂正させます──今、その力は使っていません」

「……それは、なぜでしょうか?」

「貴方自身にもその抵抗力は感じます。ですがそれは、押し通ればどうとでもなります。しかしそれ以上に、貴方を護る運命の……いえ、命運の力があるからですよ」

「…………」

「心当たりがあるようで。ええ、途方も無く強力な神格ですね。それが、ウワサに聞く失名神話の神々の祝福ですか」

 ……うーん、少しハズレ。
 彼女が答えを導き出せないのは無理もないか、俺もこればかりは口にしないし……してもなんやかんや有耶無耶になりそうだ。

 彼女が見抜いたのは間違いなくルリからの寵愛、それによる隠し効果か何か。
 少なくとも[ステータス]で分かるのは、判定操作の成功率向上だけだし。

 ルリが幸運なのは言うまでも無く、それを利用しようとする存在が現れなかったわけではない──ただそれが彼女に露見することなく、いつの間にか動きを止めている。

「どうやら私は、気づかぬ内に救われていたようですね……改めて、私を護るその慈しみに感謝の意を籠めましょう。そして、それは勝利という形で示すことにしましょうか」

「──私の名は『先読』、運命でも未来でもなく先を読む者。たとえ運命を司れずとも、先を視ることはできる」

「……ええ、では始めましょうか」

 再び拳をぶつけ合う。
 彼女の職業【運命姫】、たしかにその運命干渉能力は使えない……が、それ以外の能力が使えないわけでは無い。

 直接俺の運命を弄れずとも、俺の行う攻撃の結果を先読みすることはできるだろう。
 また、彼女の言う通り異なる形で先読みを行い的確なカウンターも放てるはず。

 未来を視て運命に干渉し、それで無双しているだけで勝てるほど、逸脱した連中の中でも上澄みの奴らは弱くは無い……それを身を以って体験しているので、油断は禁物だ。

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