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DIY、とにかく戦い続ける
闘技大会無制限部門前篇 その49
しおりを挟む俺の代わりに『SEBAS』が戦い、死ぬことなく[ミュチ・ユアル]を殺した。
能力値をマイナスにすることによる能力封印能力、【救星者】の御業のお陰だな。
「──さて、このまま退場させるのが一番良かったのですが……さすがに無理ですよね」
「ははっ、まさか[ミュチ・ユアル]を殺せるなんて……僕も何度か検証はしてみたんだけどね」
時間は掛かったようだが、自力で“水氷”から抜け出していた『忌創展概』。
制限時間を考えれば、もうそろそろ……判定に縺れ込めばおそらく勝てる。
だからこそ、このまま相手が何もしないわけが無い。
これ以上の禁忌を犯して、何かをする──そうなる前に、攻撃では無く口撃をしよう。
「単純な話、人の身のみでは難しかったと思われます。ですが、私にはいくつか手札がございますので……それよりも、まだ続けますか? 報酬を求めるのであれば、それもまた良いと思いますが」
「諦める……か。検証を繰り返す、それもまた僕の使命だと思うのだがね」
星敵を討つことで、星はその討伐者に対し報酬を与える。
星にできることならば、どんなことで叶えるというとんでもないもの。
それにより、『忌創展概』はより禁忌への挑戦をしようとしている。
……つまりそれは、星にしか叶えられないことを求めているからこそ、なのだ。
俺の意思を汲んで、『SEBAS』が結界の術式を広範囲に展開。
効果は防音、そして隠蔽──口の動きも漏れない状態で、内密な会話ができる。
「──もし、星のすべてを知ることができるなら?」
「…………」
「私は星敵、そして【救星者】。生産世界やこの世界などを含む、同盟とは非所属となっている星を統べる者……そこに禁忌などあって無いようなものなのですよ」
「…………交渉事は苦手かな?」
「ええ、同僚にもよく言われますよ。ですので、単刀直入に──負けてください。私を討滅する以上の利益を、貴女にもたらします」
彼女と俺に接点は無く、あくまで星敵討滅報酬が欲しいだけなのだ。
ならばその報酬に匹敵するものを、こちら側が出せばいい。
少なくとも一蹴はされなかった。
彼女もまた、俺を討滅するための苦労よりも得られるものがあればいいのだ。
「君を単に討滅できないならばともかく、寝返りともなれば僕の身は危うくなるんだが。それを救ってはくれるのかな?」
「えっ? いや、無理ですよ。私の星、基本的に人族の滞在は許してませんので」
「…………そこはどんなことをしても、助けると言うところじゃないのかい?」
「ははっ、ご冗談を。妻も子供も居る身、女性にそのようなことは言いませんよ……ですがまあ、外部の方を招いている場所に、一部屋ぐらい空きはありますがね」
「……ここからの逆転は難しいし、これからのことはいろいろと考えさせてもらうよ。少なくとも、今はまだ立場のある身だからね」
そして、試合はタイムアップで終了。
判定により『忌創展概』の方がダメージを受けていたことで、俺の勝ちとなった……判定に縺れ込むと、俺必勝だもんな。
──彼女がこの後どういった選択を取るのか、また彼女の処遇がどうなるのか……せめて祈っておこうじゃないか。
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