虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、とにかく戦い続ける

闘技大会無制限部門前篇 その41

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 やっぱりマッドだった『忌創展概』。
 一つ目の検証が終わり、次なる検証を始めようとしていた。

「やはり、タイプが違うようだ……ならばこれだ──『禁忌検証No.83:不死性の在り様と剥離』。これも再検証だ」

 今度は指輪に魔力を籠めだす。
 すると、そこから霊体型の魔物たちが無数に現れ周囲を飛び回る。

「──“千変宝珠・弾/聖”」

 形状を弾丸にした聖属性の魔力を、次々と魔物たちに当てていく。
 先ほどのように精霊が元になっているわけでもないようで、すぐに消滅する。

 ──だが、消滅後に残された魂魄は、そのまま指輪の中に帰還し、再び霊体としてこの場に現れているようだ。

《おそらくは、再召喚が可能なタイプの魔道具なのでしょう。そこに権能が組み合わさることで、補正が入っていると思われます》

 その情報をくれた『SEBAS』が、そのように考察する。
 使い捨て──要は成長しない──系の召喚器というのは、割と存在するらしいからな。

 つまり今回の霊体も先ほどの精霊アンデッド同様、実験用の被験体でしかないわけだ。
 言った内容が間違っていないならば、呼び出した霊体はある意味不死なのだろう。

「記憶の連続性が無いのであれば、それは不死と言えないのでは?」

「さて、それはどうだろう。先ほどの個体と今の個体、それは本当に違うのかな? 少なくともこの指輪は、魂魄が消滅しない限り同じものを使っている……同一の存在だ」

「哲学ですね……まあ、持論としては時と場合によりにけり、どちらであっても間違いではないとは思いますが」

「それではダメなんだよ。真実はいつも一つとは、君たちの世界の言葉だろう? そう、複数の答えが存在するなんてことはありえない。正しく導き出す、それが僕の矜持さ」

 しばらく撃たれては復活を繰り返していた霊体たちなのだが、変化が生じ始める。
 お互いに庇い延命を図り、生存する個体を増やそうとする姿が見受けられるのだ。

 軌道なども読み、自分たちが場に残るためにできることを模索している。
 都度リセットされていればできないであろう行動、それを見せ始めていた。

「完全な不死では無いだろう、だが間違いなく変化は起きている。つまり、同一の存在と証明できずとも、次代の魂魄にそれまでの記録を刻み付けることはできるわけだ」

「……では、剥離とは?」

「そちらも証明は難しいね。従来、失われていると思われるものが残っているのならば、それは逆説的に剥離の正しさを否定することになる。だからこそ、こうして僕は検証を続けるんだ」

 指を鳴らすと指輪が仄かに光り、再び霊体の動きに変化が生じる。
 ──再び霊体たちが、策も講じることなく突貫するようになったのだ。

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