虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、とにかく戦い続ける

闘技大会無制限部門前篇 その31

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 ショウが剣を切り替えた。
 俺が作った耐久度重視の剣ではなく、仲良くなった休人の職人が打ち上げた術式の妨害に長けた剣に。

 魔術を相手が意図して使ってこない以上、それはかなりの効果を発揮する。
 ……“オーバーブレイブ”が使えない、理由の一つでもあるな。

「うーん、このままだとアレだな。強制終了になりそうだ」

 時間無制限、とはさすがにいかないのが闘技大会というか現実の問題。
 各試合ごとに設けられた制限時間、それを越せば削った生命力の割合で勝敗が決まる。

 現在、ショウはほとんどの攻撃を剣で捌き切っている……が、『理操の導き手』はそれ以上に避けて防いでを繰り返していた。

 転移の魔装、結界の魔法、あの手この手とやり方を変えての対処である。
 結果として、一度として攻撃は通じていないのが現状だった。

「0と1には明確な差があるからな……そうなりゃ判定でショウの負けになっちゃうか」

 相手は『八大星魔』、いかにショウとて絶対に勝てるとは俺も思わない。
 かつて、『覇獸』に勝利したこともあるのだが、アレもアレでほぼ奇跡だからな。

 だが今回、おそらくそれを可能にするだけの余地がもう無いと思われる。
 何より、相手もまたあらゆる想定をしたうえで戦っているわけで。

「派手さは無いが、だからこそ厄介。確実に倒す、それをする必要がある敵だと認められているわけだな」

《情報にあった生徒への温厚な振る舞い、というのも正しかったのでしょう。試合開始当初とは、少々戦い方に差が見られます》

「…………全然分からないんだが、そう言うのなら間違いないんだろうな」

 俺から見れば、ショウと『理操の導き手』の戦いは、それこそ大人と子供の力比べぐらい圧倒的な差があるものだった。

 お互い手の内を隠している現状。
 しかし、隠す余裕のある側と隠す必要がある側とではやはり差が大きい。

 ショウの“オーバーブレイブ”は、使えば死亡確定の自爆技。
 他に心当たりがあるとすれば、ジーヂーやもともと習っている道場の剣技だろうか。

 それらを考慮したとしても、おそらくは届かないであろう『理操の導き手』。
 名に反しないその振る舞いは、まさしく理想の存在なのだろう。

「──結局、“オーバーブレイブ”は使われることなく試合終了と。残念ではあるが、いい試合だったな」

《はい、とても》

 特別凄いことがあったわけではない、詰め将棋のように着実な戦い方で、ショウの動きが封じられていっただけの話。

 かつて語ったが、どれだけの偶然も一切介入する余地の無い必然の前には起きない。
 これはその類いだった、それほどまでに力の差が──この結果を生んだのだろう。

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