虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
2,593 / 2,832
DIY、とにかく戦い続ける

闘技大会無制限部門前篇 その21

しおりを挟む


 耳飾りの遺製具レリック、そして俺の販売した光線銃による曲射がショウを追い詰める。
 足を負傷した結果、機動性を大きく削がれてしまったショウは──

「──ん? アレってもしかして……」

 ショウが何やら決意を定めた顔で、手を胸に当てた。
 それからだ、放たれた光線が尽くショウを包む膜に防がれている。

 繰り返されるたび、ショウの傷ついた部位が治っていくのが分かった。
 回復用のアイテムは装備以外使えない、つまりそれは──

《職業、装備、武技や魔技に該当するものはございません。遺製具によるものでしょう》

「けど、ショウが持っている遺製具の中に、そんな物は…………いや待て、ショウが倒した中にそれっぽいのが居た気がするな!」

 正直、ショウ(たち)の偉業はその数が多いため、特定が難しい。
 その中には、固有種を倒したという話も存在していた。

《情報を検索…………坊ちゃまがパーティーで挑んだ固有ユニーク種、それらしき能力がございました》

「ああ、言われて思い出した。でもそれってさ、たしかショウが選ばれたわけじゃないんだよな?」

《はい。そのため仕様上、坊ちゃまが使うことはできないはずですが……『プログレス』の影響かと思われます》

「ショウの新たな能力ってわけか」

 あくまで推測ではあるが、正解はどうあれ事実は変わらない。
 ショウは何らかの形でパーティーメンバーの持つ遺製具を、自分も利用したのだ。

「──攻撃の吸収、お陰でショウもダメージが通らなくて苦戦したって話だったな。その遺製具もダメージの吸収はできる仕様らしいけど、今回はそれが功を奏したのか」

《光線銃はたしかに有用ですが、そのダメージ量がネックですからね。特に『曲光』は拡散する『拡光』ほどではありませんが、通常よりも威力が低下しますし……どうやら、決めるようですね》

 光線銃は遺製具で吸収し、柄の遺製具が生み出す攻撃は剣で捌いている。
 ……どうやら剣で捌き、威力を低下させたものも吸収対象になっているらしい。

《本来の選出者ではできないことも、坊ちゃまであれば可能となっています。一種のバグとも言えますが、優れたやり方です》

「結局どっちの攻撃も吸収して、それを利用しての身体強化のごり押し。全然手札を見せないまま、勝つことができるわけだ」

 どうやらネックレス型の遺製具による法則の書き換えも、そう何度も使えなかったらしい……最後はあっけなく、対戦相手を舞台から落としてショウが勝利するのだった。

「さすがに最後は相手も手が尽きたか……いやまあ、普通遺製具は一つ持っているだけでも凄い方だしな」

《一つ持っているだけで幸運、それ以上であればそれ以外の素質を秘めている、という認識ですからね。それは『プログレス』が普及した今も変わっていません》

 …………そんな遺製具を、人造という多少のデメリットはあるが創れる俺。
 うん、そりゃあ禁忌認定されて『騎士王』に排除されるのが普通なわけだ。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」  騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。  この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。  ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。  これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。  だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。  僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。 「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」 「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」  そうして追放された僕であったが――  自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。  その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。    一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。 「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」  これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する

こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」 そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。 だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。 「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」 窮地に追い込まれたフォーレスト。 だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。 こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。 これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷

くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。 怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。 最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。 その要因は手に持つ箱。 ゲーム、Anotherfantasia 体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。 「このゲームがなんぼのもんよ!!!」 怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。 「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」 ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。 それは、翠の想像を上回った。 「これが………ゲーム………?」 現実離れした世界観。 でも、確かに感じるのは現実だった。 初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。 楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。 【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】 翠は、柔らかく笑うのだった。

異世界召喚に巻き込まれた一般人、馬鹿にされたので勇者より先に悪者を倒します

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、トラックの衝突事故に巻き込まれそうになる。すると偶然にも傍に居た四人の高校生の足元に「魔法陣」が誕生し、彼等と一緒に謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには五人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。話を聞くと現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「四人」のはずであり、召喚された状況から考えてレアは召喚に巻き込まれただけの一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追放された後にレアは勇者にも匹敵する能力があると発覚し、彼は異世界を自由気ままに暮らすことに決めた。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

原産地が同じでも結果が違ったお話

よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。 視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。

処理中です...