虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、忙しく動く

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「──と、いうわけで……情報を吐け」

『…………何が、どうなっているのだ』

「正直余裕がないから、さっさと場所を言ってほしい」

『…………いや、だからどういう状況か、それを説明してほしい。なぜ儂は、また蘇って・・・いるのだ』

「ハァ……そこから説明しないと駄目なのかよ。仕方ない、一から説明してやる」

 誰も居なくなった湖。
 俺はその近くで、ヘノプスと言葉を交わしていた。
 えっ、死んだ? ……はいはい、簡単に説明しますから。

「お前はまだ、死んだままだ。俺が用意した魔道具を埋め込まれて、生きているように錯覚しているだけ」

『ッ! やはり貴様らは、どうしようもなく人の道を外れている!』

 おーっと、いきなり外道認定されたよ。
 簡単に言えば、死体の記憶を元として動いているだけの人形だ。
 魂はすでに輪廻の環に向かっているだろうし、あくまで仮死ならぬ『仮生』なのだ。

「そう怒るなって、別に奴隷として使役しようとする気も、変に改造する気もないさ。ただ、この世界の核がどこになるのか……その在り処を教えてほしいだけさ」

『……なぜ、それを知っている』

「知っているも何も、俺は持っていて使っているからだ」

 その言葉は、ヘノプスに衝撃を与える。 
 ギョッとしたみたいに口を開き、首を伸ばして俺に詰め寄ってくる。

『貴様らに、その資格など──!』

「時間がないって言ってるだろ! 早く核の場所を言えよ! 知りたいなら、そこで俺が何をするかを見ていりゃいいだろうが!」

 そして、俺がキレる……逆ギレだな。
 いや、早く設定を変えないと火山が噴火するというのに粘るんだもん。
 そもそも、モザイク付きの【■■者】なんて説明できないからな。

「資格なんて、知るか! 死んだお前も、外部から来た俺も、この世界から見たらもう邪魔者なんだよ。どうせ開かない扉しか教えなかったお前は、罪を償って俺に核の場所を教える……こんなシナリオで満足だろ!」

『傲慢な……だがもういい。──乗れ』

「乗れ?」

『すぐにその場所に連れていく! だから、早く乗れと言っているのだ!』

 なんだか良く分からない急展開、少し思考が回らなくなってしまう。
 てっきり場所だけぶっきら棒に告げられ、歩いていく予定だったんだが……。

 止まった思考はヘノプスの指示を忠実に聞き入れ、ゴツゴツとした甲羅の上に乗る。

『だが、一つだけ真剣に答えてほしい』

「内容によるが……なんだ?」

 すでに死んだ瞳ではあるが、『仮生』のお蔭でまた輝きを宿している。
 そんな目でこちらに質問をしてきた。

『貴様が手に入れた資格、それはいったいどこに関する資格なのだ』

「うーん……星、だな」

『…………そうか』

「信じる信じないも、お前任せるよ」

 それを聞くと、動きだすヘノプス。
 衝撃が甲羅を伝って体に響くため、超高速で死に戻りを行うのはご愛嬌。

 しかしその前に、尋ねなければいけないことが……。

「あのさ、これってどこに行くんだ?」

『無論、水の中だ』

「デスヨネ~」

 ヘノプスの行く先は湖の中。
 嗚呼、結界が使えないというのに。

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