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DIY、とにかく戦い続ける
闘技大会無制限部門前篇 その07
しおりを挟む本戦出場定員は二名、残されたのは四名。
それぞれを観察していると、そのうちの一人が知り合いの娘さんと発覚した。
「…………譲る、はありえないにせよ。共闘であれば……無理でしょうね」
《おそらくは侮辱として受け取られます、あまり好ましくは無いかと》
獣人全体がそうとは言わないが、それなりに戦闘狂の気質がある彼ら。
その中でも頂点に居るのが【獣王】、就職条件からして武力トップな獣人だし。
そんな頂点に立つ獣人の娘さん、かつこのような場所に居る。
どう考えても乗り気な戦闘……好きな子だろうし、最悪の場合必ず揉めてしまう。
まあ、彼女自身の実力が足りずに脱落する分にはおそらく何も起きないだろうが。
ただ俺はここに居て、何をしようにもその影響が彼女に出る…………やるしかないな。
「バレないように勝たせ、そのうえで私も勝つ。これしかありませんね」
《難易度は少々上がりますが?》
「少々、でしょう? できる以上、やり遂げるしかありません」
《畏まりました》
さて、現状の把握を行なおう。
先ほど人魚系の水人族の少女が爆音を出して、その影響で【獣王】たちの娘さんが姿を隠すためのローブが剥されている。
ちなみに話題に上げていない最後の一人、【操奏剣主】は音を斬っていた。
……やっていることは無茶苦茶だが、実際にやっていたらしいので仕方がない。
「二人しか次に行けない以上、残った二人を退けなければならない…………もう、使いますか──“僂瓏仙武”」
『ッ!!』
周囲に大きな変化は無い。
だが俺が術式を起動した途端、三人がいっせいにこちらへと視線を向ける。
やっていることは単純、あるエネルギーを媒介に肉体を強化しただけ。
スペック上、つまり能力値としての数値にさして変化は無いが……効果はある。
現在、体内を巡っているのは通常時を遥かに超える膨大な量の──仙丹。
魔導世界やら監獄やら……特に脱獄時の一戦を経て、完成した一つの極致。
「まあ、一発しか打てませんのでどうぞご安心を。これより放ちますは──」
『させるか!』
剣の雨、声の狙撃、そして逃走。
三者三葉の動きを見せる中、すぐに遠ざかる獣人の少女の姿にほっと一安心。
俺自身は剣に刺し貫かれようと、声の弾丸に撃ち抜かれようとお構いなし。
ただ脚を高く上げ、これから何をするのか見せつけるだけ。
彼女も遠距離の攻撃が無いわけではないだろうが、それよりも逃げることを選んだ。
それは悪いことではない、今特攻して俺を排除できても二人から狙い撃ちになる。
ならば自分の身を守るために距離を取り、そのうえで次を考える方がいい。
……他二人が攻撃しているのは、それぞれ剣と水の膜で防御を展開済みだからだ。
「──痛いですねぇ……ええ、とても痛い。ですので、この痛みを皆さんにも味わってもらいたい──“デッドデュエット”」
『!?』
報復系『プログレス:バイバイバック』、そしてその派生能力“デッドデュエット”。
効果は死亡時のカウンター呪殺、死者の数だけ即死耐性と呪い耐性を減衰させてから。
これにより、水人族の少女が即死。
もちろん闘技場のシステムでそれは無かったことになり、無事退場となった。
また、俺を殺していなかったということで娘さんの方は無事。
問題は、俺を殺しまくっていたにも関わらず、その場に残っている【操奏剣主】。
《どうやら、呪殺に対する妖刀を保持していたようです》
「…………」
──ちくせう、妖刀ってそんなに万能じゃないはずなんですけど!?
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