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DIY、とにかく戦い続ける
闘技大会開発技部門 その35
しおりを挟む切り札の一つと思われるオリジナル術式。
その根幹を成していた召喚術の妨害をした結果、【魔導勇者】は更なる切り札を以って俺を殺しにかかる。
「魔導解放──!」
魔動……いや、魔導だろう。
それはかつて、生産世界で『万象戯画』が魅せた界画術と似て非なるもの。
自ら魔力、技量、何より確固たるイメージにより成し得る改変事象。
ソレとの違いはただ一つ、限りなく本物に近い偽物か正真正銘の本物か、である。
「『SEBAS』!」
《“生存結界”の設定変更──出力を限界突破状態で展開させます》
「──“星呼びの生笛”」
その宣誓が成された瞬間、俺は死んだ。
その魔導自体が攻撃を有していたわけでは無い、だが副次的に生じた力の圧がとんでもなく苛烈だっただけのこと。
結界は対魔技用に設定を弄っていたので、それ以外は素通りのはず。
つまり魔技に関わらず星杖そのものの圧、その在り様を捻じ曲げる力が要因か。
死後、俺が目にしたのは星杖が空間ごと自らを歪めていく姿。
長杖だったそれはやがて笛の形を成し──【魔導勇者】の中に取り込まれる。
「……これは」
「知っておくといい。“星呼びの生笛”は星杖を笛として用いた召喚魔導。たとえば──こんな風に!」
小柄な体格に見合った、小さく細い腕を薙いだ【魔導勇者】。
その時に生じる、擬音ならば『ヒュンッ』とでも例えそうなありふれた動き。
──だがそれと同時に暴風が、轟雷が生じればそれも異常でしかないだろう。
「……音を媒介とした事象の召喚? いえ、これは──」
「察しがいいね。そう、これはただの召喚術じゃない。己と事象とを結びつける言わば憑依召喚! 意思なき力の塊だが、星杖であればそれもできる!」
「…………やはり、そうでしたか」
えっ、分かるわけないじゃないか(怒)。
だがそれっぽい雰囲気を出してしまった手前、こう返すことしかできない。
ただ『SEBAS』は理解してくれているようなので、そちらに解析はお任せ。
俺はその情報材料になるものを、少しでも多く掻き集めるのが役割だ。
「ですが、それをここまで大っぴらに語るのはなぜでしょうか?」
「なぜ? 魔導はイメージの押し付け、それが知られれば知られるほど、世界そのものがそれを受け入れやすくなる。つまり、こうして話して誰かが理解するだけで、より世界に魔導が馴染み、扱いやすくなるわけだ」
「…………であれば、たしかにここ以上に最適な場所はございませんね」
なんせ会場だけでなく、中継などを介して世界中に広まっているし。
使えば使うほど低コストに、しかも妨害できない魔導……いやはや、面倒過ぎる。
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