上 下
2,551 / 2,752
DIY、とにかく戦い続ける

闘技大会開発技部門 その29

しおりを挟む


 敵は【魔導勇者】、俺を星敵として討滅することを目的としてこの場に居る。 
 星杖から放たれるその力の圧は、見た目の幼さで軽視することを許さない。

≪──それでは決勝戦、試合開始!≫

 俺はすぐに行動開始。
 先んじて『SEBAS』が術式を準備してくれていて、それを試合直後で起動する。

「──“乱雑転移ランダムテレポート”」

「……はっ?」

 視て一瞬で理解したのだろう、この転移は穴だらけだ。
 舞台上、様々な場所に瞬時に移動しているが……俺も何もできない。

 滞在時間・座標、共に不明。
 代わりに、超低コストかつある悪用もできるのが“乱雑転移”の特徴だ。

「──『舞い踊れ、彷徨う中で』」

「…………」

 そこに重ねるように、擬・武神流による攻撃を行っていく。
 内容は当然転移に対応したもの、転移したその一瞬に反動を度外視して攻撃する。

 どれだけ体幹を崩した動きでも、転移で距離が切り替わればどうとでもなるからな。
 さながら捨て身の如く、何度もフェイントやら死角からの一撃を加えていく。

「──通じませんね」

「当然だろう?」

「柔剛兼ね揃えた、特殊な結界ですか……反動で死なないのはとても喜ばしいですね」

「……この場で戦えて良かったな」

 部門として、オリジナルの術式しか使えないからこそなのだろう。
 普段なら自由に選べる結界も、今回は万能として作り上げられたモノに限られる。

 俺の攻撃はすべてが、まるでゴムを押したかのように跳ね返されてしまう。
 だがそれでも、堅いものを叩いた際の反動ダメージが発生しないため死なないでいる。

「ふむ……ではこちらから、そろそろ行かせてもらうぞ」

「ッ!」

「──“火炎ヒエン”」

 星杖を一突き、そんなワンアクションだけで成立した術式。
 本来であれば、そこまで火力も出ないものなのだろうが──【魔導勇者】は違う。

 星杖が強化したであろうその術式は、本来の性能を遥かに超えた事象を示す。
 ──逃げ惑う先を選べない俺は、やがてその術式に食われる。

「っ……かっ!」

 転移する俺に対処するためか、対象範囲は自身を含めた舞台全体。
 その範囲は縦横だけに留まらず、奥行きまでも──結果、天を焦がす火柱が生まれる。

「これほどですか、【魔導勇者】とは!」

「ほんの挨拶程度だ、そう易々と死なないでもらいたい──“水氷ミヒョウ”」

「ッ……!!」

 瞬間、登っていた熱気の柱が冷気の柱へと変貌した。
 理屈は分からない、そしてそれを理解している暇もない。

 炎に呑まれていた俺は、それを感知できないまま氷漬けにされてしまう。
 ──それでも、『愚者の石』に仕込んだ術式は確実に起動できている。

「──“術、式、鑑破”」

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~

山田 武
ファンタジー
テンプレのように異世界にクラスごと召喚された主人公──イム。 与えられた力は面倒臭がりな彼に合った能力──睡眠に関するもの……そして催眠魔法。 そんな力を使いこなし、のらりくらりと異世界を生きていく。 「──誰か、養ってくれない?」 この物語は催眠の力をR18指定……ではなく自身の自堕落ライフのために使う、一人の少年の引き籠もり譚。

異世界行ったらステータス最弱の上にジョブが謎過ぎたからスローライフ隠居してたはずなのに、気づいたらヤバいことになってた

カホ
ファンタジー
タイトル通りに進む予定です。 キャッチコピー 「チートはもうお腹いっぱいです」 ちょっと今まで投稿した作品を整理しようと思ってます。今読んでくださっている方、これから読もうとしていらっしゃる方、ご指摘があればどなたでも感想をください!参考にします! 注)感想のネタバレ処理をしていません。感想を読まれる方は十分気をつけてください(ギャフン

神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜

FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio 通称、【GKM】 これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。 世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。 その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。 この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。 その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

運極さんが通る

スウ
ファンタジー
『VRMMO』の技術が詰まったゲームの1次作、『Potential of the story』が発売されて約1年と2ヶ月がたった。 そして、今日、新作『Live Online』が発売された。 主人公は『Live Online』の世界で掲示板を騒がせながら、運に極振りをして、仲間と共に未知なる領域を探索していく。……そして彼女は後に、「災運」と呼ばれる。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

処理中です...