上 下
2,544 / 2,646
DIY、とにかく戦い続ける

闘技大会開発技部門 その22

しおりを挟む


 ついに攻防が始まる。
 俺自身の視界ではジーヂーの動きを捉え切ることができず、『SEBAS』による自動防衛に委ねることしかできない。

《旦那様》
「──“貼地路在”」

「ふむ、効果はあるのか?」

「さて、それは後のお楽しみに」

 準備が整った、そう告げる『SEBAS』へ応じるように術式の行使を代行する。
 バトルロイヤルの時にしか使っていないこの術式、それが出番になるのはまだ先だ。

 だが、この術式の準備を終えたことで解放されるものがある。
 ──対処に限度があった動きに、変化が生まれていく。

「むっ、動きが良くなったのぅ。これも今の効果か?」

「さて、どうでしょうね?」

 処理能力が抜群に向上した。
 すでに一度戦っていることもあり、動きをある程度予測可能なのだ……人間、癖をすべて伏せるのは難しい。

 後の先、ジーヂーが行動をし終わる前に結界を弾き中の体を動かす。
 すでに起動している“孤独蟲毒”、じわじわと強化される肉体が彼の攻撃を叩く。

 まだ能力値的には遠く及ばず、純粋な技量も敵わない。
 それでも蚊に刺されるより強く、きちんと子供が大人を叩くぐらいの火力は出る。

「──ぺしっとな」

「…………」

「それじゃあ、『爆弾』を爆発させますとしますか──『己が身を顧みず、彼が為の礎とならん』」

「ほおっ、こりゃあ躱し切れん」

 死んだ際に発生する爆発効果。
 それは『人間爆弾』によるもの、加えて複数の[称号]の効果が相乗してその火力を更に高める。

 生じる爆風がジーヂーを襲う。
 二度目以降はともかく、この一発目だけは届く──だがその一発、それだけで求める効果を出すことができた。

「……腕一本で済んだ、と言うべきか?」

「ええ、殺すつもりでしたので」

「ふむ、ならば良し」

 振るえる力の何割かを、削ぐことに成功した……のだろうか?
 ここから腕を生やされたらおしまいだが、この試合でポーションは使えない。

 腕を生やすスキルも使えないし、オリジナルの武技にも現状腕を生やすレベルの代物は無い…………はずだよな?

「あ、あの、腕……生やせますか?」

「さすがにそれは、武人では無かろう。お主の前の対戦者であれば、できそうじゃがな」

「あっ、はい」

「まあ、腕が残っていればくっつけることもできたんじゃが……アレではさすがに、使い物にならんわい」

 うん、武人is何?
 腕はこんがり、というか炭化レベルまで焼き尽くされているので、どうやら再利用はできないようだ。

 これで正真正銘、相手は片腕一本になってくれた……これでも全然油断できないのが、ジーヂーの恐ろしいところである。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ダンジョンマスターは、最強を目指すそうですよ?

雨霧つゆは
ファンタジー
ごく普通のゲーマー女子がひょんな事から夢で見た部屋に入ると転移してしまう。 転移先は薄暗い洞窟。 後にダンジョンマスターになっている事を知る。 唯一知能を持ったダンジョンマスターを巡って世界が動き出す。 陰謀、暗躍、内乱と次から次へと問題が起こる。 果たして元の世界に戻れるのか? *端末によっては一部見にくい部分があります。 *不定期更新していきたいと思います。

【完結】父に殺意を抱くまで。

ひかり芽衣
ライト文芸
洋一は養子として水島家に0歳の時に迎え入れられた。 『血の繋がりは関係ない、大事なことはお互いを思い遣る気持ちだ』 が父の口癖で、洋一は本当に幸せな日々を過ごしていた。 15歳のある日、認知症の祖母が爆弾を投下するまでは...。 一気に崩れた幸せな家族。洋一は人に心を開かず孤独に成長をして行く。 そんな洋一の心の支えは、時折脳裏に浮かぶ少女の笑顔だった。 洋一が25歳の時、父の病気を期に洋一の日々が変わって行く...。 ※恋愛要素は少な目です。 ※5/8毎日投稿開始します。5月中の完結を目指します。 2作品目で拙い点もあると思いますが、完結&毎日投稿を目指して頑張ります。

チートな転生幼女の無双生活 ~そこまで言うなら無双してあげようじゃないか~

ふゆ
ファンタジー
 私は死んだ。  はずだったんだけど、 「君は時空の帯から落ちてしまったんだ」  神様たちのミスでみんなと同じような輪廻転生ができなくなり、特別に記憶を持ったまま転生させてもらえることになった私、シエル。  なんと幼女になっちゃいました。  まだ転生もしないうちに神様と友達になるし、転生直後から神獣が付いたりと、チート万歳!  エーレスと呼ばれるこの世界で、シエルはどう生きるのか? *不定期更新になります *誤字脱字、ストーリー案があればぜひコメントしてください! *ところどころほのぼのしてます( ^ω^ ) *小説家になろう様にも投稿させていただいています

チートなガチャ運でVRMMO無双する!?~没入型MMO「ラスト・オンライン」

なかの
ファンタジー
「いきなり神の剣が出たんですけど」 僕はチートなガチャ運でVRMMO無双する!? 330万PV(web累計)突破! 超大手ゲームメーカーの超美麗グラフィックな大型RPGの最新作「ラスト・オンライン」 このゲームは、新技術を使った没入型MMO、いわゆるVRMMOだった。 僕は、バイト代をなんとか稼いで、ログインした先でチートのようなガチャ運で無双する!! 著/イラスト なかの

狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・

マーラッシュ
ファンタジー
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

The Blood in Myself

すがるん
BL
 父の転勤で、ある町にやって来た高1の陸。不思議な雰囲気の同級生・三景と出会い、反発しつつ惹かれていくが、やがて不気味な蜘蛛の幻に脅かされ始め…。人の心を喰らう異形の存在『影』に対峙する一族と、彼らの力になるため血を与える『贄』の物語です。 ※自サイト、ふじょきん様、小説家になろう様にも連載中です。

【完結】「アンティーク・ベア」のいる店へようこそ!〜ならない秘密のオルゴール〜

ayame
ファンタジー
亡き大伯母から、経営していた骨董屋を継いで欲しいと手紙を受け取った16歳のエレーン。意気揚々と乗り込んだお店には、4匹のテディベアがいた。 「嘘でしょ!? なんであんたたち、しゃべるの? 動くの?」 個性豊かなアンティーク・ベアたちとともに送る、骨董品にまつわる不思議な物語。 昔昔に書いていたものを、登場人物を増やしてリメイクしてみました。他作品と違い、かなりのゆるふわ設定で、現実味は薄めです。ツッコミどころが多いことをご了承の上、お付き合いくださいませ。完結しておりますので毎日更新です。

魔王のジョブを持っているVRMMOのアバターで異世界へ転移してしまった件

Crosis
ファンタジー
借金まみれになり自殺した滝沢祐介は、目覚めると自分がプレイしていたVRMMOのアバター、クロ・フリートの身体とチート能力を持ち異世界に転生してしまう。 しかしいくら強力な力があってもお腹は満たせない為転生してすぐ、空腹により気を失うのであった。 そんな彼のハーレム異世界奮闘記である。

処理中です...