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DIY、とにかく戦い続ける

闘技大会開発技部門 その20

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 準決勝の相手はジーヂーだった。
 遅かれ早かれ、それ自体は起きうることだと想定していたのだけどな。

「…………」
「…………」

 試合が始まっても、俺たちは動かない。
 ジーヂーはおそらく、こちらの動きを読んだうえで自分がどう動くのかを決めているのだろう。

 俺は……うん、特に何も考えていない。
 あちらが動いてから始める、それぐらいの段取りしかしていないからな。

《準備完了です》

「……動かない、のですね」

「前回のこともある、下手に動いても仕方が無いのでのぅ」

「そうですか……ですが、それならばこちらも準備を入念にしていきましょう。水は揺蕩い、万姿を映す──“氷位喪白”」

 さっそく『白氷』の再現術式を起動。
 すると、周囲に雪が生まれ吹雪始める。
 水分操作の権能、それを模した術式は水や氷、そして雪などを生み出すことが可能だ。

 ちなみに詠唱に意味は無く、あくまでブラフとして唱えたものである。
 前回の擬・武神流もあってから、警戒心を露わにしてくれた。

「……寒いのぅ」

「その割には、平然としておりますね」

「儂のような見た目じゃと、山籠もりなんてしてそうじゃろう? 慣れじゃよ、慣れ」

「そんな単純なものですかね……」

 本家本元のモノと違い、水分を弄っているだけなので特殊な効果などは無い。
 冷えていくだけ、その対策としてジーヂーは何やら周囲にオーラを纏っている。

 簡易的なバリアとなるし、肉体を保温する役目でもあるのかもしれない。
 顔色一つ変えず、ただこちらが動く瞬間を待つ姿には驚きを隠し切れなかった。

「しかし、動きが少しでも鈍っていると祈りましょう──“銀世界にて、戯れる雪像”」

「うむ、掛かってきなさい」

 雪を操作、周囲に人形をいくつか製作。
 紡いだ言葉によって詠唱は成立し、それらに俺と同程度の当たり判定が付くように。

 あくまでそれだけ、それ以外に術式としての効果は無い。
 ──だがそれを、別の者が操作するのであれば話は別だ。

 人形たちが、突如として動き出す。
 俺と同じように周囲には薄い結界、その中で保護された形で移動を開始する。

 そのすべてが『SEBAS』の操作によるもの、ゆえに連携は寸分の狂いも無い。
 対するジーヂーは眼を閉じ、何やら集中している……怪しいが、それでも攻撃開始。

「──“柳流・竹箆”」

 前回も聞いたことのある言葉を紡ぐと、仕掛けた攻撃すべてが受け流されていく。
 だがどうやら、紡いだ後半の単語にもまた意味があるようで……攻撃が始まった。

 攻撃を受け流すと同時、叩くというかはたく要領で攻撃を行う雪像にぺしっと一撃。
 軽く見えるはずのそれだけで、結界ごと雪像は砕かれ淡雪と化して消えていく。

 やはり一筋縄ではいかない。
 攻防自在なカウンター武技、そんなものまで開発していたとは。

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