虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、とにかく戦い続ける

闘技大会開発技部門 その16

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「──“舞い踊れ、翼はためかせ”」

 謡うように告げるのは、擬・武神流として『アーツクリエイター』に組み込んだ一連の動き。

 落下するコンゴウに対し、ひたすら連撃を放っていく。
 上空であることを活かした拳撃、脚撃、そして全身を使った体術のラッシュ。

 ダメージは微々たるもの、コンゴウも自らの体を堅く、軟らかく矛盾した肉体に変質させることでHPの減少を抑えている……それでも確実に、数値は減りつつある。

「!?」

「どうして、と言いたそうですね……ネタ晴らしをするならば、そういった力を持っているからですよ」

 それは『闘匠』と『貧弱な武力』、加えて『遥かな高みへ(物理)』と『スカイファイター』という[称号]の効果。

 落下を始める前、『SEBAS』が入れ替えてくれた[称号]である。
 ダメージ貫通、固定ダメージ、攻撃による滞空延長、空中戦時のコンボ補正。

 絶対に通るダメージが内部に響き、空に跳ね上げられ積み重なっていく。
 結果、強制的な怯み状態となり防御はできても反撃ができない状態になっている。

 本当なら防御もできないのだが、それは俺が虚弱なので可能になっていた。
 このまま行けば、着地する前にHPが尽きて終わるが……当然そうはいかない。

「──『起、爆鱗』!」

「っと、危ない危ない」

 コンゴウの体に生えた鱗。
 そこに触れた瞬間、小規模な爆発が発生して俺を吹き飛ばす。

 ダメージ自体は結界のお陰で発生していないのだが、ノックバック効果があるらしくそれなりに距離を取られてしまう。

 その隙を突き、コンゴウは自身の背中に蝙蝠の翼を展開。
 滞空が可能となった彼の体を、翼を持たない俺は追い抜き地面へと向かう。

「では──“駆け上がれ、楼閣の頂へ”」

「……どこまでも。恐ろしいよ君が」

 周囲に“生存結界”が展開され、それを足場に上へ上へと向かう。
 コンゴウが近づいてきたところでその数が上昇、全方位からの攻撃が行われる。

 的確なガードをしてこようとするが、膨大な戦闘データがその隙間を容赦なく突く。
 仙丹は無いが蹴り上げた衝撃を溜め込んでおり、それを内部に響かせ再び硬直させる。

 鱗は爆発するが、すでに一度経験したことなので問題ない。
 結界が攻撃を当てる一瞬のみ、その周りに展開されノックバックを抑え込む。

「くっ……!」

「手札が足りませんね……フィナーレといきましょう──“零れ落ち、流星の如く”」

 翼を破壊し、下へ落としていく。
 落下ダメージそのものは体を液体にでもすれば防げるだろうが、それでも[称号]シナジーから成るダメージが威力に変換される。

 この擬・武神流は『アーツクリエイター』で生み出し──そのうえで、『スペルクリエイター』による詠唱効果を組み合わせた特別な武技だ。

 謡う言葉は意味を、力を持つ。
 流星の如く、と謡ったことで俺たちの落下速度は文字通りそれに匹敵するものに。

「──完敗だ」

 純粋なソレであれば、落下ダメージの完全な無効化もできたかもしれない。
 だがコンゴウはキメラ、少なくともこの一瞬で成り切ることはできなかった。

 視覚化されたコンゴウの生命力、そのゲージが尽きる。
 地面に墜落したコンゴウは粒子化し、この場から消え去るのだった。

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