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DIY、とにかく戦い続ける
闘技大会開発技部門 その15
しおりを挟むピンチになり、『SEBAS』が使ってくれたのは世界樹を顕現させる術式。
それを使って上空まで逃げ延びた俺だが、木登り(走)で追いかけてくるコンゴウ。
「──仕方ありません、アレを使います」
《よろしいのですか? アレはまだ、未完成ですが……》
「今更ですね。元より、そういったものばかりじゃないですか……ええ、ぶっつけ本番というのもいつものことです」
トントン、と軽快に跳ねる。
ここが大樹の太い枝の上とはいえ、一歩間違えれば落下して即死──だが、今の俺は抜群の重心操作でそれを免れていた。
俺にその才覚があるわけではない、いつも通り『SEBAS』が操作しているだけ。
代わりに追加の術式は用意できなくなったのだが、今回はそれで充分である。
「『偽・武神』改め『擬・武神流』……初公開といきましょう」
事前に『アーツクリエイター』を使用し、組み込んでいった我流の武術。
それは『バトルラーニング』に蓄積したあらゆる戦闘技術を、最適化したもの。
一方のコンゴウ、彼は俺に近づくにつれてその異形度合いを高めつつあった。
警戒しているのだろう、だからこそ俺は一歩前に踏み出し──落下を始める。
「──“空は澄み、高くどこまでも”」
オリジナルであるからこそ、名称もまた自由に決められる。
謡うように唱えたソレは、ある流れを引き出すための鍵。
同時に、落下しながら角度を調整──何もない宙を蹴り、コンゴウへ接近。
それは想定されていたのだろう、防ぐべく動こうとする。
力強く足を踏み出し、その場で迎え撃とうと──
「解除」
「んなっ!?」
今更だが、“界樹統誕”について追加で説明を行おう。
急成長させた世界樹を操作するこの術式、だが一つ欠点が存在する。
結論から言えば燃費、そりゃあ世界樹を育てるなんて普通なら膨大な年月──そしてその過程で発生するリソースをすべて食い潰してやっとこさ、なんて代物だからな。
参考にした『界樹の神子』の権能も、あくまで育ち切った世界樹を使ってのもの。
アイスプルならともかく、他所の世界でリソース泥棒はできない。
なので俺は思いついた──よし、一時的に育ってみせればいいか、と。
つまり先ほどまで在ったそれは、あくまで世界樹(未来の姿)。
若木が事前に溜め込んだリソースを基に、超短期間だけ上に伸びていたのだ。
俺が解除を言ったのは、ただそう見せたいがためのブラフ……ただの時間切れである。
閑話休題
そうとも知らず、そして知っていても対処できないほんの一瞬の隙。
すぐに対応はされる、だがそれでもこの一撃だけは避けさせない。
「──“舞い踊れ、翼はためかせ”」
己の意思とは関係なく、体が勝手にコンゴウに一撃を喰らわせる。
ダメージなんて微量、たった1……だがそれも積み重ねれば、どうなるだろうな?
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