虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
2,528 / 2,812
DIY、とにかく戦い続ける

闘技大会開発技部門 その06

しおりを挟む


 初戦の相手はさす兄風の魔銃使い。
 二丁の銃(魔動機盤)による魔動が、彼のメイン攻撃と思われる。

≪それでは、一回戦──開始!≫

 始まった瞬間、右に下げていた銃を抜くと引き金を引く。
 弾丸は飛び出ず、代わりに放たれるのは魔力で編まれた現実改変──ではない。

「……霧消はさせないのですね」

「今の技術力では、まだね」

「そうですか、原作再現ができる日を影ながら応援させてもらいます」

「なら、応援席で見ていてほしいものだ」

 放たれたソレはただただ、純粋に魔力を塊として撃ちだしたもの。
 だが本来、魔力の塊が直撃すれば構築していた術式は奔流に呑まれてしまう。

 術式を解体……とまあ、少々危うい説明をするならそんな感じ。
 だが俺(というか『SEBAS』)はその展開を予期し、結界を多重に展開していた。

 これが魔動なのか、技術なのかはまだ断定できない。
 技術だった場合は大いに面倒臭い、それだけで使える魔動が一つ増えるわけだからな。

「……まだ初戦、などと言っている場合ではありませんね。初めから全力をお見せするとしましょう」

「ッ! ……これは」

「殺傷能力による規定もございませんので、思いっきりやりましょうか」 

 万能結界、自己強化、そして攻防一体。
 今回『愚者の石』にインストールしてあるのは、この三つの術式だ。

 手を抜いていたらヤバい気がしたので、すぐに実験を開始することに。
 まず俺が行ったのは自殺、魔力を自分に放ち自害する──そこで“孤独蟲毒”を発動。

 死亡後も『超越生者』が内包する[称号]の効果で生存、ついでに“千変宝珠”で特に意味の無い禍々しい色のオーラを演出して背後に生み出す。

 そして、入場からずっと『SEBAS』が準備を整えていた術式も宙に展開。
 今回は俺が死ぬのを考慮していたので、過剰な数の術式展開もある意味問題無し。

「周囲の術式に名前はありませんが、まあ空気を圧縮して一方向に放つだけの簡単なモノです……量が量ですので、最悪死にかねないですが、ゲームですので大丈夫ですよ」

「そこまで再現するのかな?」

「私の耳元で指を鳴らせばあるいは……どうでしょうかね?」

「……いいだろう、やれることは全部やるだけだ」

 死の警鐘、その強さがより高まっていく。
 危険度に応じて鳴る仕様なので、彼自身に何らかの形で自己強化が施されたと察する。

 目に見えないのはそれが術式によるものではないから、おそらくは魔力か精気、あるいは生命力なんかをくべての強化だろう。

 そして、こちらに向けて移動を開始。
 同時に拳銃を巧みに操り、展開されている術式の尽くに向けて先ほどの魔力の塊を撃ち出している。

 バッチリ視認しているだろうし、元ネタよりもいろいろとできるのだろう。
 発動までが短いものからすぐさま処理されていき──そのすべてが消される。

 そのうえまだ余裕があるようで、何度もこちらに向けて銃撃を開始。
 俺は結界でそれを阻みつつ、移動しながら“千変宝珠”の形を矢に変えて飛ばす。

 原作を再現する気なんてサラサラない、勝つために俺たちはお互いを討つべく距離を縮めていった。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!

七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ? 俺はいったい、どうなっているんだ。 真実の愛を取り戻したいだけなのに。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

処理中です...