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DIY、とにかく戦い続ける
闘技大会開発技部門 その06
しおりを挟む初戦の相手はさす兄風の魔銃使い。
二丁の銃(魔動機盤)による魔動が、彼のメイン攻撃と思われる。
≪それでは、一回戦──開始!≫
始まった瞬間、右に下げていた銃を抜くと引き金を引く。
弾丸は飛び出ず、代わりに放たれるのは魔力で編まれた現実改変──ではない。
「……霧消はさせないのですね」
「今の技術力では、まだね」
「そうですか、原作再現ができる日を影ながら応援させてもらいます」
「なら、応援席で見ていてほしいものだ」
放たれたソレはただただ、純粋に魔力を塊として撃ちだしたもの。
だが本来、魔力の塊が直撃すれば構築していた術式は奔流に呑まれてしまう。
術式を解体……とまあ、少々危うい説明をするならそんな感じ。
だが俺(というか『SEBAS』)はその展開を予期し、結界を多重に展開していた。
これが魔動なのか、技術なのかはまだ断定できない。
技術だった場合は大いに面倒臭い、それだけで使える魔動が一つ増えるわけだからな。
「……まだ初戦、などと言っている場合ではありませんね。初めから全力をお見せするとしましょう」
「ッ! ……これは」
「殺傷能力による規定もございませんので、思いっきりやりましょうか」
万能結界、自己強化、そして攻防一体。
今回『愚者の石』にインストールしてあるのは、この三つの術式だ。
手を抜いていたらヤバい気がしたので、すぐに実験を開始することに。
まず俺が行ったのは自殺、魔力を自分に放ち自害する──そこで“孤独蟲毒”を発動。
死亡後も『超越生者』が内包する[称号]の効果で生存、ついでに“千変宝珠”で特に意味の無い禍々しい色のオーラを演出して背後に生み出す。
そして、入場からずっと『SEBAS』が準備を整えていた術式も宙に展開。
今回は俺が死ぬのを考慮していたので、過剰な数の術式展開もある意味問題無し。
「周囲の術式に名前はありませんが、まあ空気を圧縮して一方向に放つだけの簡単なモノです……量が量ですので、最悪死にかねないですが、ゲームですので大丈夫ですよ」
「そこまで再現するのかな?」
「私の耳元で指を鳴らせばあるいは……どうでしょうかね?」
「……いいだろう、やれることは全部やるだけだ」
死の警鐘、その強さがより高まっていく。
危険度に応じて鳴る仕様なので、彼自身に何らかの形で自己強化が施されたと察する。
目に見えないのはそれが術式によるものではないから、おそらくは魔力か精気、あるいは生命力なんかをくべての強化だろう。
そして、こちらに向けて移動を開始。
同時に拳銃を巧みに操り、展開されている術式の尽くに向けて先ほどの魔力の塊を撃ち出している。
バッチリ視認しているだろうし、元ネタよりもいろいろとできるのだろう。
発動までが短いものからすぐさま処理されていき──そのすべてが消される。
そのうえまだ余裕があるようで、何度もこちらに向けて銃撃を開始。
俺は結界でそれを阻みつつ、移動しながら“千変宝珠”の形を矢に変えて飛ばす。
原作を再現する気なんてサラサラない、勝つために俺たちはお互いを討つべく距離を縮めていった。
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