虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
2,507 / 2,831
DIY、コネ就職を求める

第一回職業解放後篇 その20

しおりを挟む


 船を使って世界一周、海に潜む魔物のせいでそれも難しいこの星。
 だが、それができる神代魔道具かつ迷宮なこの船……ただし金が掛かる!

「【大富豪】になれるぐらい、金があればいいわけだしな……蘇生薬と万能薬を売り捌いて得た金銭って考えると、物凄く悪人な気がしないでもないけど」

 そんなこんなで、一度行ったことの無い場所で降りてみようということに。
 冒険世界はそれなりに広いので、俺の知らない場所もまだまだ多いのだ。

 ちなみにメカドラこと願望機、龍型が眠っていたドゥーハスト王国とリーヴァン大陸も休人が全然辿り着けていない場所の一つ。

 そちらはランダムな転移で飛ばされ、見つけ出した者が居るらしいが……死に戻りできるからと、かなり無茶なことをする奴も居たものだ。

「それで『SEBAS』、俺はこの船でどこまで行くんだ?」

《『天の梯子』と呼ばれる孤島です。周囲に強大な魔物たちが生息しているため、辿り着く者がめったに居ない特別な場所です》

「……もしかして、上に行けるのか?」

《はい。その名の通り、天界と地上を繋ぐ場所ともいわれております。ただし、条件が満たされた場合にのみ発生する現象のため、今回は足を踏み入れることそのものを目的としています》

「天界にも、職業を解放できる奴が居るって情報自体はあったからな……『騎士王』は、つまりそこに行けるってことなんだよな」

 俺はすでに、ヴァルハラやらオリンポスやらの空に存在する世界に行ったことがある。
 だが本来はそちらの方が特殊で、物理的に空の上にあるわけではない。

 要するに、座標的にはたしかに空の上にあるのだが、衛星から探しても決して観測されない場所──異層空間として、空の上に存在しているのだ。

 それは対を成す地下の世界、冥界と同じことで。
 ただ地面の中にあるのではない、いわゆる概念として地下に冥界は存在する。

《この島の情報、そして天界に関する情報は休人たちも多く手にしているのですが、誰が最初に到達するかが争議となっております。目に見える新規コンテンツ、しかし手が出せない現状ですので》

「……そのタイミングで俺が行くって、いろいろと問題になるんじゃないか?」

《すでに一人、融資を募り辿り着いた休人が居ますので。本来、そこから空間系統の術式で誘致し金を得るはずだったのですが……島は転移を阻害する場所でしたので、今なお激しく揉めているようです》

「ま、まあ、前例があるならいいとしよう」

 転移阻害のフィールド、この船同様神代魔道具級のアイテムならどうにかなるかもしれないな……ふと頭に鳥居が過ったが、あえて思い出さなかったことにする。

 休人の往来が活発になったところで、ロクなことにならない気がするので。
 最悪、梯子を降ろされる──なんてことになりかねんからな。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

てめぇの所為だよ

章槻雅希
ファンタジー
王太子ウルリコは政略によって結ばれた婚約が気に食わなかった。それを隠そうともせずに臨んだ婚約者エウフェミアとの茶会で彼は自分ばかりが貧乏くじを引いたと彼女を責める。しかし、見事に返り討ちに遭うのだった。 『小説家になろう』様・『アルファポリス』様の重複投稿、自サイトにも掲載。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷

くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。 怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。 最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。 その要因は手に持つ箱。 ゲーム、Anotherfantasia 体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。 「このゲームがなんぼのもんよ!!!」 怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。 「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」 ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。 それは、翠の想像を上回った。 「これが………ゲーム………?」 現実離れした世界観。 でも、確かに感じるのは現実だった。 初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。 楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。 【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】 翠は、柔らかく笑うのだった。

私はいけにえ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」  ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。  私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。 ****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。

処理中です...