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DIY、コネ就職を求める
第一回職業解放後篇 その16
しおりを挟む交渉の切り札、【大船長】しか知るはずの無い情報を用いた。
その効果は覿面、隠そうとしても隠しきれない動揺が窺える。
「……本当、なのか?」
「ええ。制限すべてを解放し、どこへでも行ける……その保証はありません。ですが、現状でもできないことは多いでしょう? 最低限、現状よりも上位の権限を与えることができるでしょう」
「…………」
「これ以上はありません、ダメならば大人しく諦めましょう。さて、どうでしょうか? 誠意は受け取っていただけますか?」
不敵な笑み……を浮かべられていればいいのだが。
はっきり言って、この一連のやり取りは無駄なのだ。
──失うものがほとんど無い、相手も俺もである。
「ハァ……いいぜ、交渉成立だ。アイツらへのご褒美は、お預けになっちまうな」
「申し訳ございません。向上した権限で、何かしていただけますと」
「そうするしかねぇな」
俺は情報を伝えるだけ、知っていてもこの船をどうにかすることはできないのだから、ここ以外の使い道は無かった。
対する【大船長】も、職業の強制解放のリキャストタイムが発生するだけなのだ。
それを望むヤツが居たとしても、そいつに代わりのモノを出して次に待たせればいい。
仮に不満を抱こうとも、【大船長】の方でどうにかしてくれるだろう。
その程度の問題で俺との取引を成立できるなら、充分釣りが出る……そういうことだ。
◆ □ ◆ □ ◆
「──ほいよっ、これで全部のはずだ。下級はやらなくていいんだったな?」
「ええ、そちらはすでに」
「中級以上をねぇ……まあ、休人は何でも就けるみたいだし、無い話でもないか」
俺のように職業の解放を求めて、訪れる者も居ないわけではないようだ。
最初に接触した休人も、もしかしたらそうなのかもな。
「さて、俺の方は約束を果たした。誠実な対応を、してもらうぜ」
「分かっています──こちらを。私は内容を見ておりませんが、この中に権限を向上させる方法が記されているようです。私はこの部屋で待機しておりますので、それをお確かめになってください」
「……休人だもんな、やるだけ無駄か。とりあえず部屋は出入りを封じておく、問題なく済んだら解放してやるよ」
「ええ、よろしくお願いします」
そんなこんなで、【大船長】が退出して例の方法を試すことに。
なお、虚偽を見破る何かがあっても先ほどの俺の話に嘘は無い。
うん、俺は知らないからな。
──代わりに他の、優秀な執事が知っていることは言わないでおくとしよう。
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