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DIY、コネ就職を求める
第一回職業解放後篇 その04
しおりを挟む迷宮の最下層(一つ上)に飛ばされ、そこから這い上がっていくことが求められた。
合間合間で行われるボス戦を、乗客たちがショーの一環として楽しむそうで。
そこで理想的な振る舞いができれば、報酬が貰える。
ある程度溜めていけば、【大船長】への拝謁も早まるだろう。
≪今回も、恐れ知らずの冒険者が現れた! 相対するのは魔獣! 最下層にて愚か者を喰らう深海の怪物! ──『深淵ノ使イ』!≫
そんなこんなで、コロシアム然とした広間に立っている俺。
こちらからは外部の状況も、ましてやアナウンスなど把握できない。
だが事前に忍ばせていたドローンにより、別会場にて行われている広間の中継をさらに間借りさせてもらっている。
闘争を観るのがご趣味な皆さんが、どちらかの死により幕を閉じる惨劇を望んでいた。
──まあ、最近は休人など死んでもさして面白くない連中も多いのだろうけど。
「さて、こちらも始めるとしますか……まんまリュウグウノツカイですよね、これ」
白銀色で長い魚、ぐらいのイメージでしか無かったのだが、少なくともフォルムに限ればリュウグウノツカイそのものだ。
ただ違うところを挙げるなら、その色がかなり禍々しい系の黒だったり、角から雷を迸らせていたり、口元からそれらが混ざったような濃霧を吐き出していることぐらいか。
うん、絶対にリュウグウノツカイそのものではないな。
しかも深海、ではなく深淵……どこから見つけてきたんだよ、こんなヤツ。
《迷宮の召喚機能で呼びだした可能性もございますが、この魔獣はそれなりに高額です。おそらくは、外部からの持ち込みかと》
「……これを?」
《本体そのものではなく、素材や遺骸そのものなどです。あるいは化石、そういった形で得られた欠片を、迷宮の機構により復元。それであれば、通常より低コストでの召喚が可能となります》
一回成功すればその死体から再度復元したり、また再召喚を仕込むことでその過程すらカットできる……改めて、迷宮の理不尽さを思い出してしまったよ。
「盛り上がる戦いを、しませんと……縛りもありますので、あまり無茶はできませんが」
《目に見える派手さ、となりますと──》
「今回は何となく分かりますよ。ただ、対等に戦うよりもまずは挨拶をしませんと。傾向が分からないと、彼らも戸惑いますからね」
迷宮で弄ってあるのか、俺が無防備にしていてもまだ何もしてこない。
戦いの火蓋は人側から、そんなお決まりがあるのだろう。
一歩、また一歩と前に踏み出し、ある程度距離が縮まったところで武器を取り出す。
現れた短剣、それを構え──無抵抗のまま動き出した深淵ノ使イに喰われるのだった。
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