虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、コネ就職を求める

第一回職業解放後篇 その01

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 S9 海

 ようやく【死霊術師】系統の職業を、解放してもらうことに成功した。
 まあ、対価に【大死導者】が休人に目を付けた気もするが……うん、気にしない。

「──はてさて、お目当ての相手はいったいどこに居るのやら」

 今回のターゲットは【大船長】。
 解放できるのは【船員】、そしてそこから海上関係の派生した職業群だ。

 冒険世界の海は広い、不死鳥が現れる孤島のように特殊な条件を満たさないと辿り着けない場所やら、世界の名に相応しい冒険が求められる海域なんかもあるとかないとか。

 さて、【大船長】は冒険世界中の海を股に掛けて渡っているらしい。
 船自体が一種の拠点であり──そのうえ、迷宮でもあるという珍しい代物だ。

 そんな代物なので、休人の中にもその配下となっているものが居る。
 そしてその休人は、[掲示板]を通じて現在位置を時折暗号として発信していた。

「犯罪をしているわけでもないし、客はむしろウェルカムって感じなんだろうな」

《稀にではありますが、客船として外部より賓客を招いてのパーティーを開いていることもあるようです。また、その特殊性を活かし話し合いの場を設けるなどして、必要性を高めています》

「自分たちに手出しをする、その旨味を潰しているわけだ。迷宮の船、それも真っ当に扱える代物なんだからレアだよな……」

 難破船がアンデッドになる、なんて事例もかつては存在したようだ。
 だが【大船長】の船は用途からもお察しの通り、超豪華客船レベルの代物。

 そう、それは神代魔道具……ではないものの、それと同等の大秘宝。
 ──そのうえで、長い年月やら様々な要因で迷宮化した極めて珍しい船なのだ。

 まあ、代わりに星脈などと接続ができていないため、乗客などが居ないと船自体が崩壊する……なんてヤバいことになるのだが。

 それを防ぐためにも、去る者は追わず来る者は拒まずのやり方で、人を集めて迷宮維持費を徴収しているのだろう。

「……おっ、あれじゃないか?」

《間違いございません。あれこそが、神代魔道具『渡泳氣船』、今回の目的地です》

「迷宮としての結界もあるから、強引な侵入はできないんだったか? 久々にこれを使うことになるな……」

 俺は今海に居るが、結界の上に足を載せたりはしていない。
 代わりに手作りの小舟──『宙泳ぐ箱舟スキーニイク』に搭乗していた。

 船に乗るにはいくつか条件があり、海のど真ん中に在る場合はこうして船を横付けして乗る必要がある……普通は小舟だと無理なのだが、俺の場合は何とかできるからな。

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