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DIY、コネ就職を求める
第一回職業解放前篇 その15
しおりを挟む魂の鹵獲、『デッドタナトス』と『コレクトキャプチャー』の組み合わせによりそれを成し得た。
そんな俺を警戒する【大死導者】。
だが俺の目的はただ一つ、職業の解放をしてもらうことのみ。
「どうでしょう。この辺でお開きということにするのは? 私の力量のほども、充分にお見せできましたし」
「…………」
「脅し、というわけではありませんが、方法はいくらでもあります──[モルメス]、我が神器でお相手することだって」
「っ! それは、相手にしたくないな」
魂を切り裂く神器、それが『死招手刀[モルメス]』である。
一本持っていれば、神器化していないただのメスでもすべてが同様の力を持つ。
今の【大死導者】は半死半生、だが冥界においてその体は霊体が100%。
魂そのものを攻撃されると、今後の活動に影響が生じる……そこを脅す。
「……交渉成立だ。その魂も持っていけ」
「よろしいのでしょうか?」
「迷惑料だ。お前の手に渡り、どのような処理をされたか分かったモノではないのも理由の一つだがな。今後、お前と敵対したくはないという意思表示だ」
「そうですか。では、ありがたく」
傍から見れば人身売買みたいなやり取りになりつつあるが、気にしない気にしない。
哀れな少女を救いました、みたいな感じに創作物ならなるはずだろう。
◆ □ ◆ □ ◆
「──“死導解放”。これでいい。無論、適性が無ければ就くことはできないがな」
「ありがとうございます。この身自体は万能の適性を有していますので、おそらくは大丈夫だと思いますよ」
「ふんっ、腹立たしい。地上に帰還した暁には、星渡りの民を何人か調達せねば」
無事……かはともかく、【大死導者】はみずからの権限で解放できる職業をすべて強制的に条件達成にしてくれた。
ここから本来であれば、当人の適性が求められるのだが……休人のスペックは、ほぼすべての職業に適応しているからな。
ちらりと[ログ]を確認すれば、成功した旨が記述されている。
あとは“職業系統樹”で、職業スキルを変更するだけだ。
「星渡りの民を、ですか……」
「なんだ、まさか同朋は売れないと──」
「ああいえいえ、むしろ逆ですよ。善良ではない、悪人もそれなりにおりますので。種族も多岐に渡り、職業だって貴重なモノに就いている個体が盛り沢山……そういった方々であれば、私は何も思うところはありません」
「……お前」
とはいえ、それは【大死導者】が冥界から地上に帰還したら、の話ではあるが。
俺は権限を[称号]で手に入れ、かつ生身で来たからこそ帰れたいわゆる特例。
半死半生で乗り込んだ【大死導者】が、脱出できるかは分からない。
まあ祈っておこう、善良な休人が犠牲者に選ばれないことを。
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