虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
153 / 2,820
DIY、穴に潜る

冥王

しおりを挟む


 そうしてやって来た王の間。
 骨でできた玉座や鬼火の照明、または鉱石でできた煌びやかな場所を想定していた俺だが……少し違っていた。

 例えるなら、黒い礼拝堂だろうか。
 席や十字架は無いものの、天上から降り注ぐ神々しさというか禍々しさというか……俺はとにかく、その場所を見て礼拝堂に近しいものがあると感じた。

 それが、扉が開かれてから思ったことだ。
 よーく奥を注視すると、奥の方に一人の子供の姿があった。

 喪服のようなドレスに身を包み、頭から黒いベールを被った少女。
 こちらを向かずに奥の方で天井を仰ぎ、何かに祈るように両手を絡めていた。

 だが、扉が開いたことで俺たちが来たことには気づいているのだろう。
 少女はゆっくりと立ち上がり、自身のサイズにあった玉座(よくゲームとかで見る普通のヤツ)に座る。

「……もう、来たみたいね」

 それが、少女が立ち上がる際に呟いた言葉だった。
 補聴器で微かに聞き取れたその言葉に、少しの違和感を感じながらも……謁見は行われていく。

  ◆   □   ◆   □   ◆

「初めまして、『超越者』君。ワタシがこの国の女王である『冥王』よ。貴男もワタシも同じ『超越者』、気軽に話して結構よ」

「……そうはいきません。貴女は女王という地位に就いていますが、私はただの無職の風来坊です。それに、同じ『超越者』と言っても格が違います。私のような末端は、貴女様に敬語を使うのが当然です」

 少女らしいソプラノボイスで、『冥王』は俺に挨拶を行う。
 この場には俺たち以外にも、人型魔物問わず強者が居るので、俺はしっかりと断ったということを主張しておく……調子に乗って殺されたくはないからな。

「あら? ではこうしましょう。貴男はワタシに敬語を使ってはいけません。格下と貴男自身が自分をそう評価している間は」

「……ちょ、『超越者』の階級に関しては置いておくとしても、貴女様は女王。私のような者は、いくら命じられてもそれを行うのは心が痛いと申しますか……」

「構わないわ。それに、貴男は正式な方法でこの国を訪問された賓客ですもの。どのような物言いであろうと構いませんよ。――そうですよね?」

 最後の部分だけ少し声を上げると、周囲から放たれていたプレッシャーが少し強くなっていく。
 ……あの、それだけで何度も死んでいるんで勘弁してもらえませんか?

「……分かった。ただ、たまに敬語になるかもしれないけど許してくれ」

「ええ、充分よ。それじゃあ、貴男に訊きたいことがあるの」

 口調を変えた途端、すぐに話題を切り替える『冥王』。
 顔は笑っているのだが、心なしか目が冷たくなっている気がする。

「答えられることなら、答える」

 そう告げると、視線は冷たいまま『冥王』の口が開く。

「では問いましょう──第一権限、いったいどのようにして手に入れたのかしら」

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

何でも奪っていく妹が森まで押しかけてきた ~今更私の言ったことを理解しても、もう遅い~

秋鷺 照
ファンタジー
「お姉さま、それちょうだい!」  妹のアリアにそう言われ奪われ続け、果ては婚約者まで奪われたロメリアは、首でも吊ろうかと思いながら森の奥深くへ歩いて行く。そうしてたどり着いてしまった森の深層には屋敷があった。  ロメリアは屋敷の主に見初められ、捕らえられてしまう。  どうやって逃げ出そう……悩んでいるところに、妹が押しかけてきた。

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する

こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」 そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。 だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。 「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」 窮地に追い込まれたフォーレスト。 だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。 こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。 これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...