虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、コネ就職を求める

現状報告 その01

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 機械箱庭に関するアレやコレやを終え、モチベーションが尽きてしまった俺。
 それをどうにかするべく取った策──それは刺激を外から補充するというものだった。

「──まあ、後で[掲示板]でも見ていればよかったんじゃないかなって思ったりしたんだが……全員呼んだ後だったし、もういいからやっちゃおうかって?」

「「…………」」

「そうね、やっぱり実体験を聞いた方が面白いわよ。翔も舞も、とーっても頑張っているだろうし」

「「…………」」

 うん、息子と娘から向けられる視線は、ただ無言で圧を掛けているだけではない。
 まるで父と母に対して、『おま言う』とばかりのジト目を向けている気がする。

「ま、まあ、言いたくないことは別に言わなくていいからさ。話したいってことがあるなら、何でも言ってくれ」

「なら、父さんは何かあるの? ……なんだか最近、箱庭の方で父さん似のプレイヤーが凄い犯罪者として扱われていたって記事が配られてたんだけど」

「…………父さんは、あんまり、冒険していないから無いかな?」

「「「…………」」」

 うぅ、絶対に嘘だという視線が……。
 その記事とやらの信憑性はかなり疑いたいが、そういった事実があることだけは間違いないわけで(つまり正しい)。

 それを正直に白状すれば、俺はゲーム内だと倫理の枷が外れてヒャッハーする系のヤツという認識に…………いやまあ、すでに禁忌の一つや二つ、軽くやっちゃってるけどさ。

 だが、そんな俺に差し伸べられる救いの手が……。
 瑠璃は俺の肩に手を置き、そっと優しく囁いてくる。

「アナタ…………」

「瑠璃……」

「大丈夫、警察は来ないわ。ただ、全部話した方が楽になるわ……さぁ、ゆっくりと話してちょうだい」

「瑠璃……!」

 うん、完全に犯罪者扱いだ。
 翔も舞もうんうんと頷いている辺り、同様の気持ちなのかもしれない。

 まあ、言い出しっぺは俺なので結局最終的には語るつもりではあった。
 ついでに言うと、一番刺激的じゃないだろうからこの流れは好都合かもしれない。

「うっ、うぅ……刑事さん、私はとんでもないことをしてしまったのかもしれません!」

「洗いざらい吐くのよ。そうすれば、きっと心も軽くなるわよ」

「刑事さん……!」

「…………俺たち、いったい何を見させられているんだろう」
「……夫婦のイチャイチャじゃない?」

 ノリのいい瑠璃が応えてくれたので、少しばかりテンションが上がってきた。
 普通に犯罪をやっちゃいました、というよりはマシな雰囲気になっただろうか?

 ──ただもう少し、もう少しだけとやり取りを続けた結果、俺が説明を行うのは数十分先となるのだった。

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