虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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固有魔動解析 中篇

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 固有魔動について、『騎士王』に情報を求めてみた。
 文字通りの魔法レベルの現実改変、それには人の魂が使われているようだ。

「資料には事象を断つ刃、空間を穿つ弾丸、それに高位階に匹敵する出力の四元素の事象改変か……それらが載っているな」

「一つ目は不明、二つ目は空間、そして三つめが火、水、土、風の四属性に対する適性が高い存在の魂を用いた固有魔動だよな。鍵は一つ目の固有魔動にありそうなんだが……」

「『生者』はその使い手と直接相対したと書かれているな。どうだった?」

「どう、と言われてもなあ……時間を停めてもその影響を斬ってくるし、空間も普通に斬撃で切り進めて転移の真似事をしていたな。要するに斬るというアクションがあるなら何でもできそうだった」

 思い返すのは、逃亡の時間。
 斬るというアクション一つで、遺製具レリックの干渉すら無効化していた恐ろしい固有魔動……それを可能とするのは、何なのだろうか。

「それ自体は我でもできそうだが……問題はそれを、人ひとりの魂で可能としている点だな。使い手の方も、相当な手練れだったのは間違いない」

「…………あっ、それかも」

「それとはなんだ?」

「いや、当たりだったんだよ素体が。つまりだ、過去の『騎士王』を材料にしたアイテムがあったらどうなると思う? それも歴代一とかそんなレベルで才に富んだ奴の」

「それはすでに…………いや、何でもない。だがそうだな、『騎士王』だからと考えるのではなく、別の視点か。ふむ、控えめに言って我の出動事案になりそうだな」

 今、聞いてはいけない闇をサラッと言った気もするが、ここは俺もスルー。
 だが了承も得られたようで、要は普通の天才では無く天級の魂というわけだ。

 管理者がどういった形で魂を得て組み込んでいたかは知らないが、『SEBAS』の見立てでは魂の反発のようなものは無かったとのこと……不満なく、合意の上なのだ。

 どいつもこいつも逸脱した連中は、我が強いので基本的に誰かに従うことは無い。
 だが管理者に従ったヤツが居て、そいつが固有魔動の礎となった……それで理に適う。

 元より理から外れているような存在が、組み込まれているからこそのイレギュラー。
 それこそが、『事斬』の魔動機盤に宿る存在なのだろう。

「──それで、『生者』は固有魔動の域に達するナニカを作り上げるのか?」

「ん? そりゃそうだろう、魂云々はともかくやれることは何でもやってみるさ。誰かを犠牲にしなければ、合法だろう?」

「……それができないからこそ、管理者とやらは犠牲を強いたのでは?」

「犠牲かどうかは俺たちが決めることじゃないしな。管理者と固有魔動の中の奴ら、そいつらが決めることだ。今の時代なら、別の答えが出せる。まあ最悪、案役街に行けばどうにかなるんじゃないか? 神代魔道具だし」

 俺自身、行ったことの無い魂のみが入れる神代魔道具の空間。
 何だか似たようなことを、『SEBAS』がしていたからこそ解析できていた。

 うん、魂から情報を抽出して再度復活させる……とか。
 できなくはないかもしれない、なんせ神代の超テクノロジーだからな。

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