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DIY、冒険を求める(続)

機械箱庭 その09

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 扉を蹴り破り、箱庭のお偉い様たちの下へ向かい彼らを拘束。
 傀儡のように動かし生体認証を突破、最上階に向けて歩を進めていく。

「ここからは慎重に、でしたね」

 一番最初、情報管制室で手に入れていたいくつかの情報。
 ターミナルのすべてとは言わずとも、必要な情報は集められていた。

 その一つがこの辺りかいそうに関するもの。
 ファイルもかなり厳重に保管されていたようだが、『SEBAS』がそれを見つけ出して解析してくれていた。

 判明した情報、その一つは最上階へ向かうための正しい手順。
 生体認証を突破するだけではない、何重にも策は講じられているのだ。

「…………階段を一歩ずつ上がる。簡単ではありますが、余裕の無い者であればあるほど間違えやすいですよね」

 先ほどの入り口の扉だって、お偉い様がたからすればそれなりに価値があるのだろう。
 だが形あるものはいつか壊れる、扉もまた俺の蹴りに敗れてしまった。

 頑丈にするだけではダメ、だからこそこのような仕掛けになったのかもしれない。
 ……まあ、それを侵入者に利用されるようじゃダメなんだけどな。

「数段飛ばしとかやりたくなるよな……特に最後とか、終わるかもって解放感でついやりそうな気がする」

《旦那様……》

「分かってるよ、それはしない──後ろから早くも追いかけてきているし」

 先行するのは俺、つまり俺より下の階段すべてに“影蹂満”の効果が働く。
 ドレイン効果付きの影を踏みながらも、それでも確実にこちらへ近づいてきていた。

 対して、こちらは走ることもできずゆっくりと階段を上っている。
 急ぐと飛ばしちゃいそうだし、何よりせっかくの機会だからな。

「──“影鬼”+“万闇統一”」

 闇を凝縮して影に干渉させ、そこから影法師たちを生成。
 そのうえで、また闇を操作して影法師たち用の武器を模らせていく。

 影法師たちの内、半数がそのまま階段を一歩ずつ下へ。
 そして、もう片方は勢いよく飛び降り──この場から一瞬で姿を消す。

 同時に、消えた影法師たちの存在を別の場所で感じ取る。
 それは階段の一番最初、つまり先ほどまで居た部屋がある階層だ。

「条件を付けて、それを満たさないと振り出しに戻る系の仕込みか……これに関しては、人が一から仕込んだものなんだよな?」

《はい。最下層の核は箱庭として用意されたものですが、こちらはそれを用い人々が築いた代物です。本来の仕様に無い、彼らの欲が生み出した産物となります》

「響きがな……さて、追い付かれる前にどんどん量産していかないと」

 ターミナルの至る所に仕込んだ影、必要なエネルギーを回収してくれている。
 だからこそ、いくらでも“影鬼”自体は作ることができた。

 それでも、それを上回るペースで魔工機士たちが影法師を消している。
 急がねばなるまい、そこに達してようやく休人たちに勝利の兆しが見えるからな。

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