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DIY、冒険を求める(続)
機械箱庭 その02
しおりを挟む精鋭魔工機士の実力、その一因には箱庭の力を流用していることが関わっていた。
今は俺が箱庭の核に干渉した結果、その一部を妨害している。
だからこそ、それを防ぎ取り戻すべく上層には魔工機士たちが集まっていた。
最下層に居る俺が直接それを防ぐことはできない、つまりやるべきは──
「それじゃあ、今回も頼みますよ」
『はい、創者様』
初めてターミナルに来た時から、仕込んでいた無数の機械──その一つは空間収納の機構を備えている。
そこから『SEBAS』が取り出した、一体の人形──『終従人形』、通称エクリに俺は遠隔操作で搭乗していた。
俺が搭乗した時点で、もともとの姿は歪みツクルのアバターを模した姿へ。
同時に、俺の存在を転写することですべての権限を俺とエクリで共有できる形にする。
「これも遺製素材だからこそですね。何よりも、[エクリエンド]自体が高性能だったのも一因でしょうか……『SEBAS』、改めて貴方にも感謝を」
《お褒め頂き光栄です。ですが、これはエクリ──[エクリエンド]そのものの可能性ゆえでしょう。人造の固有種でありながら、加工遺製具であっても成長を遂げているのですから》
『すべては、創者様と『SEBAS』様の御力のお陰です』
他の休人、そして原人たちよりも固有種の事情に精通している俺や『SEBAS』。
なので、後天(物理)的成長が可能であっても極めて難しいことは知っている。
果たして、エクリはそれを成し遂げた。
レベル的成長、技能的成長、そして固有種たちと戦うことで■■■■にも変化が生じ、更なる力を手に入れたのだ。
職業やスキル、固有種にも格が存在するように、遺製具にもそれは存在する。
加工していると純粋な物との比較は難しいが、今のエクリは上位に匹敵するはずだ。
「おっと……とりあえず、今はやるべきことに集中するとしましょう。『SEBAS』、そちらは任せましたよ」
《お任せください。旦那様のお体、必ずやお守りしてみせます》
遠隔操作中の俺は無防備なので、そちらは『SEBAS』に任せている。
何らかの手段で昇降装置無しでも、直接最下層に来る可能性があるからな。
……正直、俺を相手にするよりも悲惨な目に遭うだろうが仕方あるまい。
「それでは、まずはご挨拶をしておくとしましょう──“影蹂満”、“影鬼”」
一歩踏み出すごとに、そこは黒く暗く、影の世界に染まっていく。
そしてそこから、俺を模した影法師が次々と現れる。
彼らは俺の歩を進めた、その後ろに。
前に進めば進むほど、彼らは増え、ターミナルは影に包まれていくのだった。
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