虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、冒険を求める(続)

機械箱庭 その01

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 休人たちは試練を終え、管理者の思惑を超えることに成功した。
 その影響はまだ[掲示板]に書かれていないので、問題の解決が先なのだろう。

 そう、問題──この箱庭の住民たち、中でも実力を持つ精鋭である魔工機士が試練を突破した休人たちに何かをしようとしていた。

 管理者が休人たちの脱出に協力するほど、何かしらの意図を持った襲撃。
 何が目的なのかと、他の休人たちも熱心に情報の共有を図っている。

 そんな中、俺はというと……この箱庭自体の心臓部分を掌握。
 そこに繋がる道も封鎖し、一人何もしない時間を満喫していた。

「おおっ、盛り上がってる盛り上がってる」

《仕掛けていた罠も次々破壊されているようです。純粋な出力はおそらく、最上位職を持つ休人よりも上かと》

「ほう、そりゃあヤバいな。例のアレか」

《はい。核からエネルギーを抽出し、出力増強を図っていたのでしょう。旦那様が回線を断ったことで低下しているものの、搭載している分はそのままのはずです》

 魔工機士の精鋭が休人たちを追い詰められた理由、その一つがこの空間に鎮座する核。
 星には劣るものの、箱庭を運用するための全エネルギーを賄える存在だ。

 その欠片を削り、魔動機盤に組み込むことで超常的な強化を図ったのが精鋭たち。
 結果、職業システムの恩恵を受けていない・・・・・・彼らでも、圧倒的な力を手に入れていた。

 ──そう、そもそもとして箱庭の中にはこれまで職業システムの恩恵にあやかるためのアイテム『系統樹の進晶』が、まったく確認されていないのだ。

「スキルとかレベルとかは、いちおう存在しているよな? なんで職業だけはそれが用意されていないんだ?」

《おそらくは可能性を狭めないためかと。スキルやレベルなどと違い、職業はいわば方向性を定めるもの。戦闘系に就けば生産などがしづらくなり、近接職と遠距離職などでもできることに差が生じます》

「そういうできなくなる、を防ぎたかったからこそか……スキルとかなら本人の適性そのものだし、レベルも上げれば上げるほどむしろできることが増えるのか」

《その分、彼らは能力値が高めです。職業を付けないことを条件とする[称号]なども確認されておりますので、おそらくはそちらの恩恵なのかと》

 箱庭が解放され、外部に出た彼らがもしも職業に就いたら……なんて際の対策もしっかりしているのね。

「で、今上から来ている魔工機士はそれに加えてブーストされた厄介な連中だと。とりあえずここの掌握は済んだけど、まだここで防衛していた方がいいんだよな?」

《はい。休人たちが管理者と共に、この箱庭の平定を済ませるまでは》

「なら、そんなに時間も掛からんだろう。少しばかり働きますか」

 俺はこの場に居なければならないが、外側で動くための手段はいくつか存在する。
 魔工機士と戦うのはほぼ確定、ならば取るべき選択は──

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